CASE STUDY
事例紹介

鹿児島県に本社を置くトータル・ソフトウェア株式会社は、2023年、オプトとの協働による経営改革に着手した。
2023年度(45期)、2024年度(46期)と2期連続でV字回復を実現。さらに2025年度(47期)は、オプトの伴走支援が終了した後も、自社だけで上期目標を達成し、組織が自走し始めている。
この変化は、特別な施策によって生まれたものではない。
顧客との関係を起点に事業を見直し、営業・マーケティング・開発・サポートを全社目標に接続し直す。そして、やるべきことを一つずつ、地道にやり切る。
一見すると当たり前にも見えるその積み重ねが、50年企業の「会社の動き方」そのものを変えていった。
今回の記事では、既に公開しているケーススタディ記事では語りきれなかった視点から、なぜトータル・ソフトウェア社が再成長できたのか、その背景を読み解いていく。
市場環境が変わるなか、求められていたのは「経営改革」だった
――今回の改革は、どのような危機感から始まったのでしょうか。
今給黎:当社が展開していた栄養管理ソフトのパッケージ市場は、すでに飽和状態にあり、今後は確実に縮小していくと見ていました。売上も、時間とともに緩やかに減少していくことは避けられないという認識でした。その中で、クラウド型製品への転換は不可避であり、かつスピードが求められる局面にありました。ここで手を打たなければ、市場の縮小にそのまま引きずられてしまう——まさにその瀬戸際だったと捉えています。そこで宮﨑さんには、まず経営の課題整理からご一緒いただきました。そのうえで「適正なマーケティング体制づくり」を通して市場と向き合っていくことに決まりました。
瀬戸口:これまでの当社は、広告投資一つとっても、今振り返れば設計思想が十分ではありませんでした。量や手段以前に、「どう市場と向き合うか」が整理されていなかったと思います。
改革の中心にあったのは、「組織を接続する」こと
宮﨑:支援開始から最初の期間、オプトは財務諸表の精査と社員との対話に時間を割きました。数字の裏にある定性的な課題を掘り起こすためです。そこで見えてきたのは、部門ごとにバラバラな動きと、経営の意図が現場に届いていない構造でした。目標はあるが、誰がいつ何をすればそこに到達するのかが曖昧で、経営と現場をつなぐ役割と仕組みが機能していなかったと言えます。
今給黎:これまでは外部パートナーに相談しても、部門ごとの最適化に留まっていました。今回は端から端まで、経営計画との接続を全体で見ていただきました。
宮﨑:オプトが設計したのは、マーケティング・営業・開発・カスタマーサポートの4部門が全社目標に向かって接続される仕組みです。そしてその仕組みを、オプトが抜けた後も自分たちで回し続けられるように設計することが、最初から一貫して掲げていたテーマでした。

――長年にわたり安定した事業環境が続いた企業では、経営層は課題を認識していても、それを現場の動きに変換する仕組みが不足しているため、組織が思うように動かないまま時間が過ぎていく。技術力があるのに成長できない。これは多くの企業が抱えている問題なのかもしれません。
「目標を追う」から「顧客を向く」へ
竹内:まず着手したのは、目標の解像度を上げることでした。「今月何が足りないか」が毎週見えるようにする。各営業担当者に週次の行動目標を書いてもらう仕組みを導入しました。実際に手を動かすことで、必要な数字と自分がやるべきことを把握できるようになります。
ここで大事なのは、単に「数字目標を追う」ことではありません。数字を追うための問いを「顧客がどこで困っているか」に向け直したことです。
栄養管理ソフトを使う栄養士たちが、どのチャネルで製品を知り、どこで価値を感じ、どこで離れるのか。常にエンドユーザーである栄養士の行動を起点に考え、KPIを設計することの重要性を伝え続けました。
窪田:広く浅い営業活動ではなく、KPIを決めて注力する部分を決める。余計なことはしない。そういった考え方を注入していただいたことは大きな変化でした。
――社内にはどのような変化が生まれましたか。
今給黎:一番大きかったのは、「必ずやり切る」という意識が組織全体に根づいたことですね。会議体は経営と現場をつなぐ意思決定の場として機能し始めました。スケジュールを崩さない。目標から逆算する。役割を明確にする。当たり前のことですが、それを全員で徹底できるようになりました。若い人材をPdM(プロダクトマネージャー)や新規営業課の課長に登用するなど、適材適所の組織づくりも進みました。
窪田:100%の製品を目指す意識が強く、なかなか開発が進まず一時は諦めムードがあった「フレミール」について、顧客フィードバックを得ながら改善を重ねていくアジャイル型の考え方を取り入れてリリースできたことも、社内風土の変化への影響は本当に大きかったです。
まずリリースできるレベルで出す。出した後に、顧客の声を聞きながら改善を重ねていく。開発チームが「できた」という体験を持てたことは組織全体の空気を変えました。

ーーそして47期。オプトの支援が終了した後も、上期で目標を達成したということですね。
瀬戸口:ハーフ達成です。過去になかったことです。43期・44期がそれぞれ前年比93%・100%だったところから、45期116%、46期114%、47期上期目標比102.5%。組織が変わった結果として、数字がついてきました。

自走できる組織実践知をつくる。それが「LTVM思想」
――今回の支援では「自走化」が一つのテーマだったそうですね。
宮﨑:はい。「まずは自走できる状態を作ること。そして、本当に必要なタイミングで外部を活用するかを、自分たちで判断できるようになること」それが、今回の支援を通じて目指していた状態でした。短期的な成果を外部依存で作るのではなく、自分たちで意思決定できる組織になる。その結果として、顧客との関係性が積み上がり、持続的な成長につながっていく。オプトでは、この考え方を LTVM(Life Time Value Marketing) と呼んでいます。
マーケティングは本来、広告や施策の話だけではありません。顧客にとっての本質的な価値を起点に事業を設計し、組織全体の意思決定をそこに接続していく営みです。また、我々が提供する「co-marketer®(コ・マーケター®)」というサービスが大切にしてきた哲学は、企業が自ら意思決定できる状態をつくることにあります。さまざまな選択肢の中から、自分たちの意思で進むべき方向を選び、どう成長していくかを主体的に決められる——そうした状態を実現することを目指して取り組んできました。
竹内:単に施策を提供するのではなく、企業が自走できるようになること。そのための判断軸や考え方をともに整えていくことこそが、私たちの役割だと考えています。今回の取り組みでも、そうした顧客起点の視点を営業やマーケティングだけでなく、組織全体の共通言語にしていくことを意識しました。そのためには、外側から部分最適で支援するのではなく、組織の中に入り込み、計画と実行の両方を担う必要があります。オプトがインハウス型の支援にこだわるのは、そのためです。
社史に刻まれたのは、施策ではなく「会社の動き方」の変化だった
――御社が毎年刊行している社史に今回の取り組みが掲載されたそうですね。

瀬戸口:弊社の50年近い歴史の中でも、オプトさんのご支援を機に大きく社内の雰囲気が変わったと感じます。我々役員だけでなく、社員一人ひとりがお二人に信頼を寄せていて、人間的な信頼も大きいですね。
窪田:現在、オプトさんのご支援は一旦終了していますが、おかげさまで47期は開発も営業も自分たちだけで回せるようになってきました。さらに現在、カスタマーサポート部をカスタマーサクセス部に変える取り組みも進めています。サポート部門が受け身ではなく能動的な支援ができるようになると、営業部もさらに動きやすくなると思っています。
今給黎:2023年3月に鹿児島の中小企業経営革新支援制度から承認を受けた、7年間の経営革新計画があります。クラウド商品の研究開発および市場ニーズに応えるための事業革新計画で、まだ残り3年を残した、いわば計画の途中段階にあります。この計画を着実に達成することができれば、当社の事業基盤はより強固なものとなり、安定性も大きく高まると見込んでいます。この計画、スケジュールを崩さずに推進していくことはもちろん、さらに成長を加速させていくという意識を持って取り組んでいます。その前提のもとで、必要であれば外部の力も活用しながら、この計画の実現確度を高めていく。そうした判断を、自分たちでできる状態になってきている感覚があります。
宮﨑:47期において、自走しながら売上・純利益を伸ばされたことは、単なる数字のインパクト以上に大きな意味を持つ成果だと感じています。さらに、自社の状況を踏まえた上で、「このタイミングであれば外部に投資してもリターンが出せる」と判断し、必要に応じて外部に相談する。この意思決定を自分たちで行い、事業を回していけている状態こそ、私たちがチームとして目指してきた姿でした。
それが実現できたことを、率直に非常に嬉しく思っています。

――企業が再び成長するとき、始まりはいつも顧客に向き直るところから生まれる。そこに経営と現場がつながり、組織が自分たちの力で回り始めたとき、成長は一過性のものではなくなる。トータル・ソフトウェア社の変革は、その一歩が確かに踏み出せることを示しています。





