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事例紹介

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デジタルマーケティングの基盤構築により、1,350万人の顧客データの分析・活用を実現。

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実店舗やネット通販など、さまざまなタッチポイントで顧客との関係構築を推進している事業会社にとって、データとテクノロジーを活用したデータマーケティングの推進は大きな課題であり、チャンスでもあります。しかしながら、データマーケティングの推進を掲げるものの、具体的にどのようにデータ基盤を整備し、どのようなアクションを生み出せば良いのかわからないまま、なかなか効果を生み出せないケースも存在します。こうした課題に対して、オプトでは戦略策定の支援にはじまり、プロダクト開発やPoC※(実証実験)の支援、ビジネスグロースに向けたマーケティング支援まで、DX推進のあらゆるステージを支援しています。

商業施設「三井ショッピングパーク」を国内に多数展開されている三井不動産株式会社(以下、三井不動産)も、オプトの伴走型支援によってデータとの向き合い方に変化が生まれている企業のひとつです。両社のこれまでの取り組みとその成果について、三井不動産株式会社石井 宏明氏(以下、石井氏)、大塚 麻紀子氏(以下、大塚氏)、岡村 栄治氏(以下、岡村氏)と、株式会社オプト細谷 杏子(以下、細谷)、山内 瑛子(以下、山内)が振り返りました。

※PoC:Proof of Concept(実証実験)とは、新たなアイデアや新規事業に関するコンセプトの実現可能性、得られる効果などを検証すること。

デジタルマーケティングの推進を掲げるも、何から始めればよいのか分からなかった

――まずは三井不動産さまより、2020年にオプトと協業する以前の会員基盤のデータ構築についてどのような課題をお持ちだったのかお聞かせください。

石井氏:「三井ショッピングパーク ららぽーと」「三井アウトレットパーク」をはじめとした商業施設やECサイト「三井ショッピングパーク &mall」を展開している当社では、オプトと協業する以前からデジタルマーケティングを掲げ、One to Oneコミュニケーションやオムニチャネルの推進を目指してきました。

ただ、実際は、どのようなデジタルマーケティングを展開するのか、具体的にはどのようにお客さまの情報を収集し、分析し、活用するのかは模索しながら進めている状況でした。

それまで、お客さまへの販売促進施策は主に施設ごとに展開していて、三井ショッピングパークという会員基盤のデータを活用した施策は不十分でした。オプトとの協業は、まさに会員基盤のデータをデジタルマーケティングに活用するための基盤づくりの段階からスタートしたといえます。

岡村氏:各施設のウェブサイトや公式LINEアカウントもそれぞれ独立して運営していましたので、お客さまにどのような情報を届けるのか、どのような来客促進施策をするかについても施設によってバラバラでした。お客さまにとっても、施設単位の案内情報は届くけれども統一した考え方がなく個別の情報、三井ショッピングパーク全体の情報は届かないという状態で、その情報の粒度もバラバラでした。

大塚氏:それぞれの施設にとっても、これまでは施策効果について「他の施設と比較してどうなのか」「三井ショッピングパーク全体の中でどのあたりの位置にいるのか」という部分も見えていませんでした。現在はそうした施設同士の比較検証ができる状態になりましたので、お客さまにどのようなマーケティング施策によってショッピングパークにお越しいただくのかなどを、施設担当者が考えられるようになったと思います。

データ基盤の整備とPoCから始まった、オプトのデータマーケティング支援

――三井不動産さまのこうした課題を受けて、オプトではどのようなサポートをしていったのでしょうか?

細谷:最初に私が携わらせていただいたことが、メールマーケティングのPoC施策でした。対象となるお客さまに対して、その時の情報を的確に届ける。そして、それを自動で行う施策について、その基となるデータ基盤の要件定義から始め、自動配信のシステムを実装するなど、準備には1年半ほどをかけました。当初は、コロナ禍の協業スタートでしたから、集客施策の推進には不安もありました。PoC期間が終了し、施策の実施に踏み切れたのは、コロナ禍が落ち着いて人流が戻ってきたタイミングとなりました。

山内:準備にあたっては、三井不動産さまからさまざまなデータを共有していただき、そのデータでお客さまにどのような価値を提供できるのかなどについて調査しました。そうした取り組みをきっかけに、三井不動産さまのビジネスへの理解も深まったことで、具体的な顧客分析や、お客さまのお客さまを特徴ごとに可視化するなどの、実際のアクションにつながったと思います。

――PoCをきっかけに協業がスタートし、協業が深まっていくなかでどのような気づきがありましたか?

石井氏:マーケティングオートメーションの施策要件定義からスタートしたオプトとの協業ですが、さまざまな施策を通じて“データとの本当の意味での向き合い方”を理解できたと思います。データをどのように分析すれば、よりお客さまのことを深く理解できるのか。サービス業などデジタルマーケティングが進んでいる業界やデータ分析を得意とするオプトにとっては当たり前のことなのかもしれませんが、私たち不動産開発を事業の柱とする会社にとっては、あまりなじみのない考え方でした。1,350万人いる三井ショッピングパークの会員さまについて、いつ、どの店舗で、どのような商品をお買い上げいただいたかという購買行動をどう分析するのか。このマーケティングの基本要素についてデータを見て実践するということが、これまでデータに触れてこなかったが故に、きちんとできていなかったのです。

オプトとの協業として、この1,350万人の会員データに触れていただき、「こうした分析ができるのでは」というさまざまなご提案をしていただきました。だからこそ、私たちも「こうしたお客様への訴求ができるのではないか」というディスカッションを深めていくことができたと思います。オプトからデータの造詣に深い人に入っていただいたことが、私たちにとっては非常にありがたいきっかけになりました。

岡村氏:データ分析ができる方に入っていただいたことで、社内でも「こんな分析がしてみたい」「こういう仮説を検証してみたい」「キャンペーン施策の効果を検証したい」「LINEやWebサイトなどデジタル施策の価値を算定したい」など、さまざまなデータマーケティングのニーズが生まれていきました。もちろん、私たちはデータの専門家ではないため、依頼の内容も曖昧であったり、仮説が大雑把であったり、依頼したいことが上手く言語化できなかったりしたこともあるのですが、そうした依頼にも親身になって受け止めて伴走してくださったことが、今の関係につながっているのではないかと思います。

山内:三井不動産さまとの取り組みでは、実際のデータを見ながらディスカッションして進めさせていただくというケースが多いものですから、最初に要件を固めすぎるのではなく、私たちからの提案を含めて柔軟に対応できたことが非常にありがたかったです。

大塚氏:こちらとしては、あまり細かい説明をしなくてもちゃんと理解してくださったり、疑問に感じる部分の目線が同じだったりして、“あ・うんの呼吸”で協業できていることが本当に助かっています。

石井氏:こうしたプロセスを通して、私たち自身も色々と勉強させていただいたというのが正直なところです。例えば、データの定義ひとつをとっても、お客さまのカスタマージャーニーで、どのような条件で「興味を持たれた」「来館された」「お買い上げ頂いた」と定義するかを考えるだけで、さまざまな考え方がある。そうした細かい部分の精度を高めていくことで、今までなんとなく曖昧に経験則で測られていたことが、データを通して実証されていったり、あるいは反証されていったりという点について、協業のなかで学ばせていただくことが多かったです。

データドリブンにも、独自のアイデアや感性を加える“余白”が必要

――皆さんのお話から、コミュニケーションを深めながらデータマーケティング施策の可能性を探っていった様子が伺えましたが、三井不動産さまとの協業を進めるにあたって、オプトとして大切にした点があれば教えてください。

細谷:デジタルマーケティングで、よく「データドリブン」という言葉を聞くことがあると思います。もちろん、データドリブンに考えることは大事なのですが、これまでの経験に基づく感覚値も大切なのではないかと思うのです。ですから、要件を厳格に決めるのではなく、曖昧な部分を残しておいて、議論のなかでお互いの勘所を探りながらバランスを取っていく。データに価値があることは明らかです。ただ、データはあくまで過去の蓄積に過ぎない。そのため、データでわかるところはデータに基づいて、データから見えない部分は皆さまのアイデアや感覚値を盛り込んでいけたらと思っています。分析する際にも、曖昧な部分を残すことで、皆さまの感覚や興味、好奇心というものを最後のスパイスのように加えていく。そうすることでデータとの向き合い方に独自性、独創性が生まれるのではないかと考えています。

岡村氏:私たちのデータにおいても、データのみでお客さまのすべてが分かるわけではなく、欠けている部分があり、またデータの行間を考察しなければならないものも多い。その点、オプトの皆さんは私たちのビジネスモデルを深く理解していただき、また直接商業施設に足を運んでいただくことで、実際にはどういうことが起きているのだろうか?という関心と好奇心を持って、意味のあるデータ活用になるよう向き合ってくださっていることを非常に嬉しく感じています。

石井氏:まさに、私たちがオプトとの協業のなかで、オプトが他社と違うと感じている点が、デジタル、インターネットのデジタルマーケティングをもとにご提案頂くのではなく、実店舗のある商業施設のマーケティングを念頭に考えていただいているという点です。実店舗でのお客さまのふるまいを見て、お客様の関心を想像すると、私たちが収集できていないデータが非常に多いというところに気付かされます。ECやインターネットの世界のデジタルマーケティンに沿ったデータや考え方を商業施設のデジタルマーケティングに当てはめて結論を導き出すのではなく、そもそもマーケティングを推進するために何が必要なのかという点で、整理・検討をいただける点がやりやすい部分だと感じています。

二人三脚の協業から生まれた、さまざまな効果と社内の変化

――協業を進めるなかで、どのような効果が生まれたかについてもぜひ教えてください。

石井氏:私は主にデータ分析やダッシュボードを担当していますが、協業を始めた当初は、主に経験値の定量化に主眼を置いて取り組むことが多かったです。データで見える化することができたことにより、今まで経験則でやっていたことにどの程度のインパクトがあるのか、どのように施策を動かせばどのような効果が生まれるのかといったディスカッションがようやく社内で始まったと感じています。データ分析を一つひとつ積み上げていただき、そこに私たちのビジネスへの理解、事業の特性の理解を踏まえてさまざまなご提案をいただけたことが、このデジタルマーケティングの部署だけではなくて、他の部署との協業にまで可能性を拡げてくれたのではないかと感じています。

岡村氏:私は現在、スマートフォンアプリである「三井ショッピングパークアプリ」を担当しています。23年4月にリニューアルをしたのですが、全面リニューアルをしたため、旧アプリと新アプリでデータの数値が大きく異なったり、そもそもデータの定義が異なったりといった課題がありました。そのような混沌としている時期に支援に入っていただきまして、データの差異を分析していただいたり、データの定義・収集の手法についてアドバイスをいただいたり、三井不動産のメンバーだけでは到底やりきれない専門的な示唆をいただきました。具体的な施策効果についてはこれからの評価になりますが、こうした施策の下支えをしていただいていることに大きな意味があると思います。

大塚氏:不動産が基幹事業である当社にとって、ここまでマーケティングに特化したチームというのは社内でも他にありません。私は、着任してまだ日が浅いのですが、ここまでデジタルマーケティングに特化した仕事をするとは思っていませんでした。そうしたなかで、オプトには、まるでOJTをしていただいているような感覚で、データの整理をはじめさまざまな部分で助けていただいています。

――協業を通じて、冒頭に仰っていたデータマーケティングの課題を抱えていた頃から取り組み方が変わったのではないかとお見受けしますが、いかがでしょうか?

石井氏:お客さまの来訪数や購買行動を可視化できたことが大きかったですね。会社としてOne to Oneやオムニチャネルを掲げましたが、実際にどれくらいのビジネスインパクトが生まれるのかという点は、これまでなかなか見えていませんでした。しかし、データを可視化できたことによって、それぞれの施策がどのお客さまに届いていて、お客さまがどんな反応をされているかが分かりました。もちろん、「これが全てだ」と言い切ることはできませんが、データに基づくとこのくらいの効果があるということを可視化できたのは大きいと思います。そして、例えば施設をリニューアルする際に、施設にお越しいただいているお客さまにあったブランドは何なのかを考えるうえで、データを参考にしながら判断できることにも期待しています。データを分析することで、社内のさまざまな部分に意識改革が生まれつつあると感じています。

岡村氏:デジタルのプロジェクトというのは、実は成果が見えづらかったりします。しかし一方でやはり組織なので施策の効果をしっかり示していくということも重要なのです。例えば、「アプリを活用くださっているお客さまや公式LINEアカウントをフォローしてくださっている方は、他のお客さまと比べてロイヤルティがこれくらい高い」ということを示すことができれば、本部内のアセットマネージャー(施設の担当者)にも説明しやすくなる。データを理解しやすい粒度にしてデータをもとに説明することで、さまざまな立場の方にプロジェクトに入ってきていただき、さまざまな角度からデータ分析ができるようになる。山内さんがどんどん私たちのチームに関与してくださるので、最初は「ちょっとデータに触れてみましょう」というレベルだったプロジェクトが、段々と関係者が増えて大がかりなプロジェクトになる。私たちもそこでまたデータへの理解が深まり、事業推進のヒントを得る。そのサイクルを細谷さん、山内さんがどんどん作ってくれているので、私たちにとってオプトはなくてはならない存在になっています。

山内:ありがとうございます。私たちも、データ基盤の整備から支援を始め、最初は点の支援だったものが、徐々に点がつながり線になり面に広がっていく様子を感じています。協業のなかで三井不動産さまがどのようなことを思っていらっしゃるのか、どんな価値提供をゴールとして目指していらっしゃるのか、そのような理解がとても深まっています。一方で、私はさまざまなプロジェクトを横断的に担当させていただいていますので、「この点とこの点はつながりそう」という視点で提案をし、三井不動産さまの事業全体の進化に貢献できればと考えています。

データを活用し、デジタルにとどまらないマーケティング支援を

――最後に、今後の協業に向けて抱負や目標などお聞かせください。

石井氏:引き続き、私たちのマーケティング活動に必要な示唆を提供してくださる心強いパートナーとして、今後もお付き合いいただけたらと思っています。おかげさまで、オプトの支援もあって、この3~4年をかけて、多くのデータ資産やデジタルマーケティング施策の経験が蓄積されました。一方、これからは、デジタルありきのマーケティングではなくて、データやデジタルを手段の一つとして活用しながら、三井不動産がどのようにお客さまとコミュニケーションを図っていかなければならないのかを考える、お客さまの顧客体験を向上させるためのマーケティング施策をオプトと一緒に取り組んでいきたいと思います。

細谷:コロナ禍が終息したことで、三井不動産さまとお客さまの接点はこれからも増えていくと思いますし、お客さまの理解もどんどん深まっていく。そうした顧客接点で生まれる体験も加速度的に進化していくと思います。私たちも、今までデジタルマーケティングの知識や、顧客データの把握・分析というところに重きを置いてきましたが、顧客体験の進化に合わせて、私たちの力もどんどん伸ばしていかなければなりません。これからも、三井不動産さまに提案できるような新しいアセットをどんどん吸収して、進化していきたいと考えています。

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