CASE STUDY
事例紹介
新潟日報メディアネットが運営する地域情報サイト「ガタチラ」は、2020年の立ち上げ以降、約3年で月間100万PVを突破しました。しかしその先で直面したのは、「順調に伸びてきたはずなのに、なぜか次の成長に進めない」という壁でした。
この状態は、特定のメディアに限った話ではありません。立ち上げ期に有効だった「話題があるから書く」「数をこなす」といった運営モデルは、一定規模を超えると多くのメディアで頭打ちを迎えます。
ガタチラチームが選んだのは新しい施策を打つことではなく、「自分たちのメディアは、誰に、何を、なぜ届けるのか」という問いを立て直すことでした。
オプトが目指していたのは、改善を外から示唆し続けることではなく、改善が内側から生まれ続ける組織をつくることでした。支援開始から2カ月でPVが124%に伸長し、2026年1月には過去最高の月間139万PVを記録。しかしそれ以上に大きな変化は、チームのメンバー一人ひとりが顧客理解とデータを起点に仮説を立て、改善提案を出し、実行できるようになったことでした。
本記事では、メディア再設計の背景にあった思考と、組織に生まれた変化を聞きました。

地域メディア「ガタチラ」が直面した、100万PVの先にある“構造的な課題”
――はじめに、「ガタチラ」の立ち上げ背景についてお聞かせください。
熊倉氏:弊社は新聞社グループとして、従来はアナログ事業を中核としてきましたが、デジタル領域への事業拡大が急務となっていました。また、弊社が強みとする「新聞折込」の広告資産を、紙媒体にとどめずWeb上でも展開できないかという点が、大きなテーマとしてありました。こうした背景から、「地域情報」と「チラシ情報」を二軸に据えた、地域密着型Webメディアとして2020年4月にスタートしたのが「ガタチラ」です。
――「ガタチラ」の展開によって、それまでのクライアントとの関係性に変化はありましたか。
熊倉氏:大きな変化を実感しています。それまでは総合広告代理店として、マスコミ四媒体(テレビ・新聞・雑誌・ラジオ)を中心としたご提案が主でしたが、昨今は市場全体でWeb領域への関心が高まっています。「ガタチラ」で新たなソリューションを提示できるようになったことで、従来以上に幅広い顧客接点を創出できていると感じています。
――3年で100万PVを達成されましたが、その先で壁にぶつかったとのこと。当時の状況を教えてください。
熊倉氏:計画していた100万PVは概ねその通りに達成できました。ただ、4年目に入ったあたりから、その先になかなか進めない状態が続くようになりました。「何かが足りない」という感覚はありましたが、自分たちの中だけでは根本の課題が見えていなかった。そこで外部の知見も取り入れながら次の成長につなげていきたいと考え、パートナーを探す中で出会ったのがオプトです。

施策の前に、問いを立て直す。オプトが着目した“顧客起点”の欠落
――オプト側から見て、最初にどのような課題があると感じましたか。
横山:100万PVの先で伸び悩む状態には、構造的な理由があると感じていました。話題があるから書く、数をこなす、という運営スタイルは、立ち上げ期の成長には有効です。ただ、そのモデルのままでは、どこかで頭打ちになる。なぜなら、「誰に」「何を」「なぜ届けるのか」という顧客起点の問いが抜け落ちたまま、全方位に向けた記事の量だけが積み上がっていく状態になってしまうからです。
私たちが最初に取り組んだのは、新しい施策ではなく、その前提となっている問いを立て直すことでした。
顧客を知るために、現場へ。データと実態の両面からの再設計
横山:その問いを立て直すうえで必要だったのが、「読者を正しく理解できる状態」をつくることでした。そのために私たちは、まずデータの可視化から着手しました。
そのためには、数字を見える状態にすることが先決です。どの記事が、誰に、どれくらい読まれているのか。そこが見えていなければ、打ち手を考えることもできません。根本課題がどこにあるのかを、多様な側面から紐解いていく必要があると感じていました。また、同時に実際の読者の声を聞きにいくことも重視しました。
熊倉氏:外部のコンサルタントにお願いをするのが初めてだったので、最初は少し構えていた部分もありました。ただ、横山さんが私たちのレベル感に合わせて丁寧に説明してくれたので、とても進めやすかったです。プロジェクトメンバーがひとり加わってくださったような、仲間が増えたような感覚がありました。なかでも印象的だったのは、新潟に来てもらった際に、市場調査という形で市街地で実際に声がけをしながら情報を集めていた姿です。
横山:市街地でのリサーチは「ガタチラ」の認知状況やユーザビリティ、どんなタイミングで閲覧されているかといったリアルな声を集め、ボトルネックを多角的に探るという意図がありました。私自身「上から指示をする」という関わり方はしたくなかったんです。自分もガタチラチームのメンバーのひとりとして、マーケティングやSEOの知見を少し多く持っている人間、ぐらいの感覚で関わることを意識していました。
データだけでは見えない部分と、現場でしか得られない声の両方を掛け合わせて、初めて「誰に何を届けるべきか」が具体化できると考えています。

数字を「共通言語」に。顧客理解を起点にした意思決定で、チームの当事者意識を変える
横山:そのうえで整えたのが、チーム全員が同じ情報を同じ粒度で把握できる仕組みです。これは単なる計測の効率化ではありません。「この記事が読まれたのはなぜか」「次に何に注力すべきか」をチームで議論するための共通言語をつくること、そしてその議論の当事者を増やすことが目的でした。
――チームの現場では、どのような変化がありましたか。
熊倉氏:数字が見えるようになったことで、メンバー一人ひとりの当事者意識が変わりました。各メンバーから改善提案が出てくるようになり、PDCAの回転が早くなった。チームとして前向きに改善に向き合える状態になってきたと感じています。
今井氏:横山さんに入っていただくまでは、とにかく書いて数をこなすことが優先でした。入ってもらってからは、最初の段階で「本当にこのテーマでいくのか」「誰に向けた記事なのか」を意識するようになりました。最近では、初速だけで終わる記事ではなく、まとめ記事のように継続的に読まれるものも増えてきた。一時的な注目で終わらず、蓄積していける記事が増えてきたことに、やりがいを感じています。

塩川氏:立ち上げ当初から関わっていますが、どうしても書き方やテーマ選定が固定化していた部分がありました。新潟県民の視点だけでなく、県外の方から見たときにどう映るか、といった視点を意識できるようになったのは、大きな変化でした。記事のPVが伸びることも嬉しいのですが、それ以上に、お店の方から「記事をきっかけにお客さまが来ました」といった声をいただけると、すごく励みになりますね。
清水氏:「誰に向けて書く記事なのか」を最初に決めるという考え方が、今も自分の軸になっています。そこが定まると、タイトルも本文も組み立てやすくなります。工夫したことが数字に反映されると、やった意味があったと実感できますし、次ももっと良くしたいと思えます。
高野氏:ライターのメンバーが、自分の考えや改善提案を自分の言葉で出せるようになってきたのが、一番大きな変化だと思います。以前はほぼなかったことが、今は「こうしたい」「これを試したい」という声がチームの中で自然に出てくるようになった。自分でロジカルに考えて、実践して、ダメだったら次へ、というコミュニケーションが取れるようになってきました。
PVの数字が示すのは、組織の変化。「自走する改善サイクル」が生み出したもの
――取り組みを経て、どのような変化や成果を実感されていますか。
熊倉氏:数字の面では、PV水準そのものが一段上がった実感があります。ただそれ以上に大きかったのは、読者や事業者さまからの反応の変化です。「いつも見ています」「うちの会社も紹介してほしい」といった声をいただく機会が増え、情報提供の件数も以前の5倍近くに増えました。媒体としての信頼感が、少しずつ積み上がってきたのではないかと感じています。また、私にとって個人的に大きかったのは「相談できる相手ができたこと」でした。それまでは社内だけで試行錯誤していた部分が多く、判断に迷う場面も少なくありませんでした。横山さんはコンサルタントという役割を超えて、伴走してくれる存在でした。
高野氏:ある程度の道筋を示してもらいながら、最後は自分たちで選択し、実行する。「まずやってみる、うまくいかなければ改善する」というサイクルを回し続けることができ、その考え方がチームに定着してきたと思います。

横山:最も大きな変化は、改善の起点が外から与えられるものではなく、チームの中から自然に生まれるようになったことです。これはオプトが支援において大切にしていることでもあります。私たちは「改善施策を届ける会社」ではなく、「お客さま自身が顧客を深く理解し、LTV(顧客生涯価値)を起点にした意思決定ができる状態をつくり、その結果として、継続的に改善が回る状態をつくることを支援する会社」だと考えています。
――最後に、「ガタチラ」の今後の展望について教えてください。
高野氏:私たちが発信する情報を通じて、新潟の魅力に気づいてもらい、実際に足を運んでもらうことが本質だと考えています。「新潟っていいよね」と感じてもらえるきっかけをつくっていきたいですし、「まずガタチラで調べる」と思っていただける媒体になりたいですね。
熊倉氏:新潟で暮らす人の幸福度向上につながるメディアとして、さらに価値を高めていきたいと考えています。2026年4月にサイトをリニューアルしました。「みんなでつくる街メディア ガタチラ」という新たな打ち出しのもとで、読者やパートナーの皆さまと一緒にさらに価値を広げていきたいと考えています。







