CASE STUDY
事例紹介
デジタル広告やSNSマーケティングの世界で、いま「内製化」という言葉が飛び交っており、多くの企業がコスト削減やスピードアップを掲げて取り組もうとしています。しかし、「内製化」がもたらす本質的な価値は、数字や効率だけなのでしょうか。本当に問うべきは、組織が自律的に学習し、意思決定できる状態になっているか、という点です。
三井不動産商業マネジメント株式会社の取り組みは、単なる生成AI導入の成功事例ではありません。それは、外部パートナーとの関係を再定義し、組織の自律度を高めていくプロセスそのものでした。本記事では、制作効率化の枠を超え、AIによって「エンドユーザーへの本質的な価値提供」をどう最大化させていったのか。オプトが提唱するLTVM(Life Time Value Marketing)を体現する本プロジェクトの舞台裏を、現場のリアルな声と共に紐解いていきます。
前編記事はこちらから:https://www.opt.ne.jp/casestudy/12181/
現場の意思が、自走の原動力になる
――前編で伺った生成AI活用による販促クリエイティブ内製化プロジェクトは、LINEでの初期検証(PoC)を経て、どのように展開していったのでしょうか。
松澤:LINEでの成功を皮切りに、アプリのプッシュ通知やHP用のバナー、Instagram広告など、お客さまとのあらゆるタッチポイントへと対象を広げました。各チャネルで着実な手応えが得られたことで、次は各施設の現場で直接お客さまと向き合っている皆さんにも使っていただく方針になりました。
高橋氏:現場独自の視点を反映させるため、いきなり全社展開するのではなく、まずは公募で手を挙げた一部のメンバーによるトライアルから開始しました。その公募メンバーの一人が浅苧です。
――浅苧氏は、なぜ公募に応募されたのですか。
浅苧氏:実は、クリエイティブ制作における社外とのやり取りに疲弊感がありました。人を介することで、イメージがうまく伝わらなかったり、妥協点を探るプロセスでタイムロスが生じスピード感が損なわれたりと、もどかしさを感じていました。また、私も日常で生成AIを利用するなかで、自分たちでもっと自由に、スピーディーに形にすることができたらという気持ちもあったため、そのプロセス自体に興味があり手を挙げました。

“エンドユーザー起点”を共通言語に変えた伴走支援
高橋氏:オプトの皆さんの熱量も凄まじかったですね。現場の課題を肌で感じたいと、「三井アウトレットパーク多摩南大沢」へは実際に足を運んでいただきましたね。
松澤:その理由は、使ってくださる現場の方のお声が、最も重要だと考えているからです。特にAIなど最先端の技術は、机上の空論では何も生まれません。日々お客さまと向き合っている現場の皆さまのリアルな声をいかに反映し、より良い体験として届けるか。そのために、私たちも現場に足を運び、泥臭く、一緒に磨き上げていくことが大切だと思っています。こうした「現場の先にいるエンドユーザーへの貢献」こそが、オプトの推進するLTVMの根幹にある考え方です。
――現在では全国54施設へ広がっていますが、実際にオプトはどのようなサポートをしていますか。
松澤:導入して終わりではなく、不明点はすぐ問い合わせいただけるよう、日常的に利用しているチャットツールでいつでも相談できる体制を整えています。また、生成AIを「難しいツール」ではなく「親しみやすい仲間」と感じていただけるよう、オリジナルキャラクター「もふたま」を制作し、活用のコツや制作事例を「もふたま通信」として発信しています。

(画像生成AI活用プロジェクトのイメージキャラクター「もふたま」から投稿例)
浅苧氏:現場にはその戦略が見事に非常にマッチしました。「もふたま(AI)から何か届いた!」とチャットが盛り上がることもあります。AIを知る・触れてみる入り口として、とてもいいきっかけになったと思います。こうしたオプトさんの細やかな心配りがあったからこそ、現場にも浸透し始めているのだと思います。通常、こうしたプロジェクトは所管部署のみで完結しがちです。今回のように、私のような各施設の担当者が初期段階から加わり、徹底的に「現場の使いやすさ」を第一に考えてくれているところは、オプトさんに依頼してよかったと感じる点の一つです。現場が大切にしている視点を、オプトさんは尊重し、伴走してくれます。その姿勢に、深く感謝しています。
――ツール利用を浸透させていくために、どのような工夫をしていますか。
上田氏:まさに今は、どう現場や店舗に浸透させていくかというフェーズに入ったと感じています。新しいツールは、ただ導入しただけだと使われなかったり、難しそうと思われてしまったりするので、まずは心理的なハードルをいかに下げるかを大切にしています。
例えばオプトさんと協力して、施設の販促担当者とのチャットサポート体制の整備や、親しみやすい発信、現場の声を元にしたUI/UX改善などを継続しています。「難しそう」を「これなら自分たちでもできる」に変える、入り口を広げる工夫を一緒に進めていきました。現場にとってもっと便利で、使いやすいツールにしていけるよう引き続き取り組んでいきます。

――機能は随時追加・アップデートされているのですね。
塩谷:利用者を増やすという観点から、施設横断で他の施設が制作した作品を見られる「ギャラリー機能」も実装しました。他の施設の工夫が刺激になり、良いクリエイティブが連鎖していく。そんな現場同士の横展開を支援したいと考えています。
高橋氏:驚くのは、そのスピード感です。会議中に「こんなのできたらいいね」とポロッと漏らした要望を、その場で「できました!」と見せてくれることもあります。とてもスピーディーに対応してくださり、本当にありがたいですし、まさにアジャイル開発そのものだなと思っています。
――まさに現場の声が、ツールの進化を加速させているのですね。
塩谷:実際に使っている方のお話を聞くと、「クリエイティブの民主化」に貢献できたようで、嬉しいですね。私たちが成果を代わりに出すのではない。お客さま自身で成果を出せる組織をつくる。単なる伴走ではなく、お客さまの組織が自ら動ける状態をつくるための設計ができたことを嬉しく感じています。

高橋氏:今後は、社内での活用をさらに広げ、ユーザーを増やしていきたいです。機能のアップデートによって日々利便性が向上していることを丁寧に伝え、より多くの現場の皆さまに届けていきたいと思います。
販促業務を“LTV経営”へと進化させる共創
――最後に、今後一緒にやってみたいことについて、お聞かせいただけますか。
高橋氏:将来的には、販促業務全般の「仕組み化」を目指していきたいです。クリエイティブ制作の内製化や制作業務のナレッジの蓄積にとどまらず、今後は成果データの分析まで含めて、PDCAを自動で回せる体制を構築したいと考えています。
コンテンツは増え続け、企画、制作、配信、そして結果報告まで、業務は拡大しています。この一連の仕組みを淀みなく循環させる状態を構築することが、次のステップだと考えていますし、オプトのさらなる支援に期待しています。
浅苧氏:私たちは現在、スポーツ・エンターテインメント領域にも注力しており、今後さらにコンテンツの種類やチャネルは拡大していくでしょう。商業施設の枠を超えた、「コト」への取り組みにおいても、生成AIツールを使いこなしながら、共にお客さまに寄り添う方法の模索に伴走してもらいたいです。
松澤:私たちの役割はツールの提供だけではありません。三井不動産商業マネジメントさまが目指す販促や事業の拡大に必要な施策を、現場の皆さまの声を起点にしながら、何が本当にお客さまの心に響くのかをともに設計し、実装していく。実務の代行ではなく、企業さまが自律的に、かつ永続的に成長し続けられる「仕組み」を共に創り上げること。その伴走を、これからも続けていきたいと思っています。

AIを活用することで、意思決定の質と速度を上げていく。自社のお客さまをより深く理解し、その理解をもとにしたデータの分析と運用を、現場が自らの手に取り戻していく。本プロジェクトはその「仕組み」をともに築いていく過程です。
一過性の施策ではなく、組織として継続的に取り組める「仕組み」へ。
この変革が組織に根付いたとき、企業とお客さまとの関係は、より近く、速く、深く、そして永く続いていくはずです。
前編記事はこちらから:https://www.opt.ne.jp/casestudy/12181/




