Interview
※本文は取材当時の情報です。2024年4月1日より、株式会社リテイギは、株式会社オプトに統合しております。
2021年9月に社名を変更し新たにスタートした株式会社リテイギ。「すべての産業を、ともに再定義する。」というミッションには、これまで日本の産業を支えてこられた先人たちへのリスペクトが込められているという。業界の秩序やビジネスモデルに破壊をもたらす「ディスラプター」ではなく、業界や産業に対してサポーティブな「イネーブラー」であることを志す、彼らが目指すものとは。
先人をリスペクトしながら、あらゆる産業をアップデートする
「すべての産業を、ともに再定義する。」というのが、リテイギが掲げるミッションです。「ともに」という言葉には、これまで産業を支えてくださった大企業の皆さまと「ともに」歩みを進めていきたいという意味を込めています。近頃ではスタートアップ企業に比べると、何かとネガティブな側面を切り取られることが多い大企業ですが、私は今もなお日常生活のなかで価値提供の主体となっているのは彼らだと考えています。私が今日、仕事をしながら飲んだ炭酸水も、目の前にあるノートパソコンも、どれもみんな名だたる有名企業がつくったもの。きっと皆さんの一日を振り返ってみても、そうではないでしょうか。
もちろん、すべてのスタートアップ企業にも敬意を払っています。私自身も、昨年リテイギ(当時はオプトデジタル)へ入社する前は、起業し、代表としてスタートアップの経営をしていました。ですからイチから会社を起こすことの大変さも喜びもよく理解しているつもりです。でも、そうした経験があるからこそ、大企業と協業した方が、提供できる価値の総量を増やせることもよくわかる。彼らのアセットを活用すれば、短期間で社会に大きなインパクトを与えることができます。
とはいえ大企業は、変化に弱いことも事実です。特にテクノロジーがもたらす不可逆的な変化に対応できていない企業も少なくありません。だからこそ、そこに私たちの存在意義があります。テクノロジーをはじめとした時代の変化をきちんと踏まえながら、それぞれの産業を今日まで育ててくれた皆さまとともに、その産業のあり方をもう一度再定義すること。それが私たちリテイギのミッションです。
大企業と協業し、事業家が事業に専念する環境をつくる
こう説明すると、私たちの立ち位置をコンサルタントと受け止める人もいるかもしれませんが、それは誤解です。そもそも私たちにとって、大企業はクライアントではなく、協業するパートナーだと考えています。そして、そんなパートナーと共に、「今、この時代に何を創るべきなのか」をゼロベースで考え、実行しています。事業がある程度まで軌道に乗れば、どんどん子会社化して、その事業の責任者には、権限も与えています。リテイギが事業の主体となるのではなく、リテイギから各産業をアップデートするようなビジネスを展開する事業者が育っていくイメージです。
どうしてこんな体制をとるのかというと、最初のステップである検証をしやすくするためです。イチからベンチャー企業を立ち上げてしまうと、最初に思い描いた構想が間違っていたと気付いても、なかなか事業をストップできません。背水の陣で突き進むことが良い結果をもたらすこともありますが、やっぱり早めの撤退が必要なときもある。過去にスタートアップ企業の代表をしていた経験があったからこそ、この課題に気づけました。事業担当者がよりフレキシブルな判断を下せる環境を確保するためには、この体制がベストだと判断しました。もちろん私たちにとってもチャレンジングな試みです。でも、デジタルホールディングスのリソースを活用していけば、きっと優れた事業者を輩出する環境がつくれる。そう考えています。
まず再定義するのは「薬局」。大切なのは、負担の少ないコミュニケーション
ちなみに私自身も子会社の経営を任された事業者のひとりです。担当するのはリファーマシー事業。その名の通り「薬局」の再定義に挑んでいます。薬局という産業とテーマを選んだ理由は、2つあります。
1つ目は、副作用や過剰処方などを防ぐために配布される「お薬手帳」の電子化がまったく進んでいないという課題からです。約6割の薬局が、電子お薬手帳として機能するアプリを導入しているのにも関わらず、患者さんの利用率は2%程度。理由は簡単で、体調不良で薬局を訪れているときに、人はなかなかアプリをインストールしようという気にはならないからです。私たちは、まずここをなんとかしようと考えました。
一方で、この領域を当社単体でゼロから参入するのは難しいのも事実。そんな時に、「なの花薬局」を全国展開するメディカルシステムネットワークというパートナーに出会います。彼らは国の方針として勧められている薬局の「かかりつけ化」や、2020年から義務化された投薬後のフォローを実施するために、患者さんとより直接的にコミュニケーションする手段を求めていました。
そこで私たちが、試行錯誤の末につくりあげたのが、LINE公式アカウントを活用した「かかりつけ薬局化支援サービス」です。このサービスを利用すれば、LINEで友だち登録するだけで、服薬情報の管理や、処方箋送信、問診などすべてLINE上で完結。トークルームを経由して専用のページにアクセスすれば、いつでも、気軽に、薬剤師さんと患者さんとが直接メッセージ上で、やリ取りすることができます。
薬剤師さんをもっと身近で頼れる存在に
薬局というテーマを選んだ理由の2つ目は、私の母が薬剤師として働いていたからです。子どもの頃、肌が弱かった私にとって、親身に相談に乗り、いつも適切な薬を選んでくれる母の存在は、とても心強いものでした。
けれど、いざ薬局に視察に行ってみると、私にとっての母のような薬剤師さんはほとんどいないことがわかりました。多くの薬剤師さんの役割は、とにかく素早く正確に、患者さんに薬を渡すこと。それも重要な仕事ですが、「それならロボットでもいいんじゃないかな」と心のどこかで思ってしまいます。実際にお医者さんの顔と名前は覚えていても、薬剤師さんの顔や名前を思い出せる人は、そう多くないはずです。言い方は悪いかもしれないけれど、今の薬剤師さんは患者さんから頼られていない。私はそれがとても悲しいし、もったいないと感じました。薬剤師さんや薬局をもっと身近で、頼られる存在として再定義したい。これがリファーマシー事業の核となるコンセプトです。
医療を支える存在として、薬局をさらに再定義する
ありがたいことに従来のアプリに比べると、登録率も圧倒的に高いですね。実証試験での数値にはなりますが、全来局者の3人に1人が友だち登録をしてくれています。ご利用いただいている方に特に好評なのは問診機能。コロナ禍において、紙の問診票に触れなくて済むことが、患者さんの安心感につながりました。
患者さんと薬剤師さんのコミュニケーションも活発化しています。飲みづらい薬の上手な飲み方について患者さんから質問が飛ぶこともあれば、処方量が変わったタイミングで副作用が出ていないか薬剤師さんからフォローが入ることもある。吸入器など取り扱いの難しい器具の操作方法の説明も、画像を交えれば簡単に行えます。
導入前は、患者さんとのやり取りが増えることが、薬剤師さんにとって負担にならないか、少しだけ心配していたのですが、これも杞憂でした。それどころか「こんなにお客様に頼ってもらえるなら、喜んで使いますよ」と声をかけてくれた方さえいらっしゃった。このときは本当に嬉しかったです。
とはいえ、「薬局を再定義する」という目標は、まだまだ道半ばです。医療全体でみると、薬局が持っているポテンシャルをまだ十分に生かせていないのが現状でしょう。今後はさらに双方向のコミュニケーションがスムーズになる仕組みをつくることで、患者さんの健康に、より積極的に薬局が関与できるようにしていきたいと考えています。在宅医療もサポートしていきたいし、薬の消費量を適正化するような仕組みをつくることで、医療費の削減にも貢献していきたい。個人的には、リアルの薬局店舗を手がけてみたいという気持ちもあります。「次世代の薬局とは、こういうものだ!」と象徴するような店舗を、自分の手でイチからつくってみたいんです。
熱狂できる人とともに、仕事を本気で楽しみたい
こんな風に、私は今もちょっと暑苦しいくらいの勢いで「薬局の再定義」に夢中になっています。同じように何かに「熱狂」できる人を、リテイギではお待ちしています。ちなみに「寝る間も惜しんで働け」ということではないので、ご安心を。私も毎日しっかり7時間は眠っています。そこはスマートにいきましょう。
もう1つリテイギで働く上で知っておいていただきたいのが、私たちが「透明性」を非常に大切にしているということ。異なる企業文化を持つパートナーと接する機会が多いからこそ、あらゆる情報は常にオープンでなくてはなりません。わかりやすく言えば、SlackのダイレクトメッセージやプライベートチャンネルはNG。社内でも経営会議や取締役会の資料は、すべて公開しています。全員が心理的安全性を担保された上で同じ情報を共有することは、意志決定の速さを保つためには欠かせないことだと考えています。
そういった仕組みレベルの話はもちろんですが、個人的には人としても「透明性」のある方と働きたいですね。わからないときはわからない、悩んでいるときは悩んでいると、オープンに伝えてくれる人がいい。要するに人間味がある人と一緒に仕事がしたいんです。その方が、絶対に楽しいじゃないですか。もちろん、ビジネスだからしんどいときもあります。「もうこの事業は撤退すべきだ」とか、シビアな話だってするでしょう。でも、それが言えるのも互いにリスペクトがあるから。何にしても人生は一回です。思いっきり熱狂して、最後には一緒に笑える。そんな人とともに成長していけたら嬉しいです。