Interview
※本文は取材当時の情報です。2024年4月1日より、株式会社デジタルシフトは、株式会社オプトに統合しております。
営業部長として活躍し、自他共に認める「オプトの営業の顔」であった東勇佑。そんな彼は、現在営業畑から離れ、パートナー企業である日本駐車場開発株式会社(以下、日本駐車場開発)へと出向。ダイレクトマーケティング本部長として、同社のDX推進を担っています。「営業もDXも、一番大切なのは愛」だと語る彼が大胆なキャリアチェンジに挑んだ理由とは。
32歳で200億円を稼ぎ出す営業部長に。その次なるキャリアとは?
私はオプトに新卒で入社して以来、ずっと営業畑でキャリアを重ねてきました。金融、不動産、通信、エンタメなどいくつかの業界で担当営業、チームマネージャーを経験し、営業部長へと就任したのが2017年、32歳のときです。「オプトの営業といえば東」と言われるくらい、この仕事に打ち込んできました。もちろん、辛いこともありました。それでも、こんな私についてきてくれる仲間がいた。当時は、まだ若手社員だったメンバーも、今ではすっかりマネージャーとしてオプト全体を引っ張ってくれています。そんな姿を見るたびに、とても誇らしい気持ちになります。
そんな風に営業一筋だった私ですが、35歳になった頃からキャリアチェンジを意識するようになりました。もっと経営者に近い立場で、会社全体を動かすような仕事に携わりたいと思うようになったのです。これまで培ってきた営業やマーケティングスキルだけで、自分が10年後も必要とされる人材でいられるのだろうかという焦りもありました。転機は、駐車場業界のリーディングカンパニーである日本駐車場開発との出会いでした。「DX推進者として、事業全体を支援してくれないか」と出向のオファーを社内から頂きました。経営にも間近で携われるポジションであり、私にとっては断る理由がありません。喜んでお引き受けし、2020年から同社にダイレクトマーケティング本部長として出向。オプトからリテイギ(当時はオプトデジタル)へと籍を移した現在も、継続してこのポジションを担っています。
DX推進者として挑んだ一年目。成約数は約2倍に。
駐車場DXに挑戦する中で、最初に感じた課題は大きくふたつあります。まずは駐車場業界全体としての情報の整理・集約化の遅れです。例えば、同じ不動産業界であっても、物件の賃貸や売買に関する業者間の流通データベースが存在しています。ところが駐車場の場合は、個々の企業がそれぞれに空き駐車場などの情報を収集するのみで、それがオープンなデータベースとして整理されていなかった。結果的に適正な取引が阻害され、ユーザーにも貸主にとっても不利益が生じている状況でした。
もうひとつ、日本駐車場開発の固有の課題として「営業=人の力」に重きを置く企業文化がありました。マーケティング部門や企画部門は存在しておらず、各営業が担当地域のオフィスビルを一軒一軒訪問するローラー営業を強みとして、これまで大きく成長をしてきました。
各エリアにおけるビルオーナー様の情報や法人企業の車両情報・駐車場利用状況などの情報のギャップを正確に把握し、営業がそのギャップを解消するために提案を行うことが最大の武器でしたが、一方で、データ蓄積や活用、再現性などの観点ではデジタルによってさらに高められると感じました。
これらの課題点を踏まえ、DXを推し進めていくためにまず取り組んだのが、成長のためのシナリオ作りです。具体的には5カ年計画という形で、営業利益拡大のための事業計画書を策定。その一年目として、昨年から今年にかけてまず実施したのが、デジタル集客の強化です。SEO対策やリスティング広告の効率改善など、オプトが得意とするデジタルマーケティングの手法を駆使して、自社ポータルサイトへの集客数を伸ばしていきました。こうした施策が成果を挙げ、問い合わせ数と成約数は前年同月比200%のペースで成長を続けています。
並行してデータ活用とデジタル化による、社員の生産性向上にも着手しました。主に取り組んだのが、コールセンターをはじめとする顧客対応部門の業務改善です。マニュアルの作成から、スコアリングデータを活用した電話応対の品質向上など、さまざまな施策を実施したことで、ネット営業の一人あたりの生産性は、売上ベースで前年同月比よりも約150%向上しています。
駐車場業界のポテンシャルを、デジタルの力で最大化していく
こうした取り組みの結果、私がダイレクトマーケティング本部長に就任して以降の9カ月間で売上は1.8倍、営業利益は3倍まで事業を拡大することができました。DX推進者として1番最初の関門である、経営者からの信頼を勝ち取るフェーズをクリアできたことに、まずは胸をなで下ろしています。「デジタルの力ってすごい」と、経営陣に実感してもらうことがDXの第一歩ですからね。
ここからもより一層のスピード感を持ってDXを進めることで、さらなる生産性の向上と、利益の拡大を図りたい。先ほどふれた流通データベースの整備などを通じて、駐車場を有効活用したいオーナーと駐車場を探すユーザーとを効率的にマッチングする仕組みも構築していきたいです。これを実現するには、競合他社や駐車場のオーナー様など、大勢のステークホルダーを巻き込んでいかなくてはなりません。まさに産業全体の構造を大きく変えるチャレンジです。長年業界をリードしてきた日本駐車場開発のポテンシャルをデジタルの力で最大化することで、この挑戦を成功へと導くことも、私のミッションだと感じています。
同社のDX推進者として一定の成果を挙げたことで、ありがたいことに日本駐車場開発グループの他社様からも「DX推進に力を貸してほしい」とお声がけをいただいています。「不稼働資産を有効活用し、世の中に貢献する」という企業理念を掲げ、リゾート事業などを幅広く展開する同グループのDXを支援していくことは、デジタルホールディングスがパーパスとして掲げている「新しい価値創造」にもつながっていくはずです。その筋道をより確かなものとするためにも、日本駐車場開発でのDXに関する取り組みを、再現性の高いモデルとして確立していきたいですね。
大企業から地方中小企業まで。あらゆる企業のDXを支えられる人材へ
こうやって自分のキャリアを振り返ってみると、いつでも私の原動力となってきたのはクライアントや業界への「愛」だということに気が付きます。お客さんを喜ばせたい。この業界をもっと良くしたい。そういう気持ちにどれだけ本気で向き合えるかが、結局は数字につながってくるのではないでしょうか。
実は、こういった考え方はデジタルホールディングスのグループCOOである金澤から学んだものでした。オプトに入社したばかりの私に、当時、営業部長だった金澤は「クライアントにとって1番の営業になれよ」と、ことある毎に声をかけてくれました。立派な営業マンになりたいのなら、仕事という枠を超えて一生のお付き合いができるようなお客様を見つけなさい、と。そういう関係性を築くには、やっぱり愛がなくてはならない。企業の内部からDXを進めるにしても、これは同じことだと思うんです。その会社とそこで働く人が大好きだから、DXによってもっと良い会社をつくりたいと思える。今も私はそんな気持ちで、毎日の仕事に臨んでいます。
これからの目標は、日本駐車場開発との取り組みで得たノウハウをもとに、より幅広い企業の経営支援を担える人材へと成長していくことです。私の生まれ故郷である九州をはじめ、地方にはレガシィな企業がまだまだたくさんあります。そういった地方中小企業の事業変革を、デジタルの力で支えていきたい。地方の企業が業績を伸ばせば、そこで新たな雇用が生まれ、地域全体が活性化していく。そういうポジティブなサイクルも生まれるはずです。より多くの企業とパートナーシップを結び、社会全体にポジティブな刺激を与える事業を、ひとつでも多く世の中に送り出していきたいです。