Interview
本音を言っておくと…デジタルが苦手!?
※本文は取材当時の情報です。
ライター木村:今日は「テクノロジーに企業はどう適応すればいいのか」というテーマで……
栗山:先に本音を言っておくと、僕自身は超アナログ人間で、デジタルなものが苦手なんです。いまだに電子決済も利用していないし、世の中の便利だと言われていることは、ほぼやっていなくて。でも、だからこそ自分がテクノロジーに踊らされず、適切な距離を保ちながら付き合っているとも思っています。クライアント含め、デジタルに馴染みがない人の気持ちもわかります。その観点でお話できればと。
ライター木村:デジタルが苦手にも関わらず、“インターネット”広告代理店であるオプトに入社したのはなぜでしょう?
栗山:幼い頃から絵が好きで、そういうものに関わる仕事でしか社会に貢献できないと思っていたんです。デザインを美大で学び、卒業後は印刷会社や制作会社のデザイナーとして働いていて。
いつからか、もっと上流工程のコンセプト設計から携わりたいと思うようになり、事業会社やコンサル会社なら携われる可能性が高いだろうと考え、オプトへの入社を決めました。
ライター木村:その条件だとオプト以外の選択肢も多いのでは?
栗山:転職を考えたのは2008年で、これからの仕事にインターネットは避けて通れない領域だと思ったんです。デザイン業界も変化しはじめている時期でしたから。
オプトに入社して、組織マネジメントなどを経験をするなかで、デジタルシフトが進むとクライアントの事業課題も多岐に渡っていくと感じました。また、オンラインとオフラインを往復できるモノづくりにも携わりたい気持ちが募っていきました。
ライター木村:それがワントゥーテンへの出向にもつながっているのでしょうか。
栗山:そうですね。2017年3月にオプトは、ワントゥーテンドライブ(現ワントゥーテン)と「drop:Phygital Marketing Lab」を発足しました。デジタルによるデータの取得・活用とモノづくりや、リアルな場でのブランド体験提供の両立を目指すフィジタルマーケティングは、自分自身のやりたいこととも重なりました。
技術力のあるエンジニアほど「生っぽい感覚」を大切にしている
ライター木村:ワントゥーテンではどんな役割を担っていますか?
栗山:プロデュース業務全般ですね。今は、新規ビジネスに向けたプロトタイプ開発、VRコンテンツの導入と設置、AIを活用したプロトタイプ開発などに携わっています。
最先端テクノロジーを活用するプロジェクトがほとんどなので、テクノロジーに精通している側と馴染みのないクライアントの間に立って、両者の言葉を翻訳して企画を進めるのが僕の仕事です。
ライター木村:最先端テクノロジーを活用したプロジェクトに携わる魅力はなんでしょうか?
栗山:先行事例がない取り組みなので、全員がやってみないとわからないことが多いんです。だからこそ社内外問わず、試行錯誤しながら進められるのは魅力ですね。
あとは、エンジニアと携わる機会が増えて、技術力を持ったエンジニアほど「生っぽい感覚」を大切にしていると気づきました。テクノロジーはあくまで手段であって目的ではない。技術力の高い人ほどそのことを忘れずに、人間の気持ちや行動にテクノロジーが寄り添えるかを考えているんです。
ユーザーの欲求に対する解像度は上がる
ライター木村:マーケティングもテクノロジーを使って、ユーザーに寄り添うことが大切になってくるのでしょうか?
栗山:そうですね。これまで企業が施策を検討する際に使えたデータは、ウェブページ上の閲覧履歴や行動履歴といったcookie情報でした。それらを分析してユーザーの欲求を想定し、広告を表示してきました。
テクノロジーが発達して、VRやARのデバイスなどが普及すると、ユーザーとのタッチポイントが増え、取得できる情報も多くなる。これまでよりもユーザーの欲求に対する解像度が上がり、それに合わせた広告を提供できます。
ライター木村:ユーザーをより把握した上で、適切なアプローチがしやすくなるのですね。
栗山:たとえば、不動産をVRで内見するサービスだと、利用しているユーザーの視線や各部屋の滞在時間などから興味関心の度合いを把握できるでしょう。浴室の滞在時間が長ければ、提案する側は「浴室の広さや設備」をポイントにして今後の物件を紹介できます。
「失敗を受け入れる姿勢」で、テクノロジーに適応していく
ライター木村:テクノロジーが発達していくなかで、企業はどう適応していけばいいのでしょうか?
栗山:大切なことは3つあります。
まず、意思決定の速度をあげて、小さなプロジェクトをスタートできる体質にすること。一つのプロジェクトに長い年月を掛けても、完成したときにはテクノロジーの変化に対応できていないかもしれない。要件定義や仕様書の作成に3ヶ月掛けるのであれば、短期間にどんどん取り組んでみて、時代に適応させていくのがいい。
次に、テクノロジーを強みに持つ外部パートナーと連携しながら動くこと。いきなり自社ですべてを担うのはハードルが高い。なので、まずはパートナーを探すのがいいと思います。ただ、「テクノロジーの領域が苦手だから任せる」ではなくて、自社でプログラミングやクリエイティブを理解できる人を育てつつ、外部とも連携していくのがいいでしょう。
最後は、気持ちにゆとりを持つこと。テクノロジーの発達によって生じる変化に敏感になりすぎない方がいい。どんなにテクノロジーが発達しても100%間違いないものが実現できるわけではありません。たとえば、販売店においてユーザーの来店シミュレーションが多少外れても、それはトラブルじゃなくて誤差。そう思えるゆとりは必要だと思います。
テクノロジーの発達に適応するには、完璧に応えようとするのではなく、まずはやってみて失敗を受け入れながら取り組んでいく姿勢が大切だと思うんです。
※記載されている所属・役職等はインタビュー当時のものです。