Interview

「年齢なんて関係ない」。MVP受賞のスピーチではそんなメッセージを発した金崎智則(CX CREATION1部 チームマネージャー/2023年入社)。しかし、本人の仕事ぶりは、年齢や経験によって育まれた思考の深さが仕事に奥行きをもたらすことを語っています。
エンジニア一筋にキャリアを歩む、金崎の“仕事の流儀”に迫りました。
「お客さまの開発チーム」であるかのように仕事をする
――「受賞するなんて1ミリも考えてなかった。『上司からの手紙』に、56歳のワードが出たとき、自分しかいないって思いました」。そう言って破顔してみせる金崎は、チームからもお客さまからも頼りにされる存在です。それがどれほどのものなのかは、下記のエピソードからもうかがえます。
「受賞に際し、お客さまからはお祝いとしてこだわりのあるVTRを寄せていただきました。これには『私のために、わざわざここまで……』と感激しましたし、お客さまに貢献できていると実感する機会にもなりました。チームのみんなが喜んでくれたことも嬉しかったです。チーム全員で助け合いながら取り組んでいたので、チーム全員で受賞したような思いです」
――金崎が評価されたのは、2022年から続く飲料メーカーのお客さまとのプロジェクトでの金崎の仕事ぶりです。金崎のチームは、担当する清涼飲料のファンコミュニティをLINEのミニアプリで開発。お客さまはこのアプリをプラットフォームに、クーポン発行などの販売促進やユーザーとのコミュニケーションを図っています。このプラットフォームをさらに活用しお客さまの商品へのファンを増やすために、2つの施策に取り組みました。
「1つは、製品の購入本数に応じてユーザーに特典を付与する機能の搭載です。もともとこのプラットフォームでは、製品パッケージにあるQRコードをスマートフォンで読み込むとポイントが貯まり、ポイントを用いてユーザーが抽選に参加したり、キャッシュバックを受け取ったりされていました。今回は、「ユーザーの継続性を上げていくには、どのような施策が良いのか」がテーマであり、特典を付与するという案がお客さまから挙がってきました。その意向に沿って私たちが具体的な取り組みを提案し、実装を行いました。
もう1つは、電子マネーとの連携です。新規チャネルでの製品販売が決まったため、それにあわせて急きょ施策を打つことになりました。結果として、開発からリリースまで1か月という短い期間で取り組むことができました」
――いずれの施策でも金崎が重視したのは、開発スピードです。設計の確かさを担保しながら、いかにお客さまの求めるスピードで、お客さまの目的を達成するのか。これを実現するため、クオリティを担保しつつ、いかにタイムリーにリリースするかを優先させたといいます。
「お客さまのやりたい施策は、時間とともに刻々と変わります。ですから、要件をガチガチに決めて、見積もりも出して、開発する、というスピードでは、最適なタイミングがどんどんずれてしまうんですね。生活者の関心も同様です。ですから、機会を逸しないことが大切です。ただし、クオリティを7割から最大限に高めるための活動も同時に必要です。そのため、一度開発した機能をもとに、クオリティを担保するために引き続き開発を進める場合もありますが、オペレーションなど開発以外の対応を検討するケースやお客さまから提案のあった機能を割愛したとしてもその段階では問題なく機能するケースなどさまざまに考えられるので、どこまで開発しきるのが適切なのか見抜くことも大事です。たとえ、『これは大変だぞ』というスケジュール感であっても、そこに合わせていくことでお客さまの信頼が増しますから、『オプトならやってもらえる』という期待に応え続けることが一番大切だと思っています。
今回も、『こんなスピード感で、こんなにも柔軟にプロジェクトが進む経験はなかった』というお客さまからの言葉を聞くと、オプトが選ばれ続ける理由につながっているのだと感じます」

インターネットの普及がキャリアの新境地を開いた
――金崎は2023年にデジタルシフト社(現オプト)にジョイン。それまでは、インサイトコア社でCTOとして活躍していました。さらにキャリアをさかのぼると、30余年ほどエンジニアとして経験を重ねてきたことが分かります。
「最初に勤めたのはソフトを開発する会社です。ここで5、6年ほどWindowsに搭載するアプリケーションや、“組み込み系”といわれる、テレビや洗濯機など家電の動作を制御するプログラムの開発に携わっていました。その後、フリーランスに転じ、同じような開発を十数年請け負っていました。インサイトコアに入社したのは2007年です。この頃になるとインターネットはずいぶん普及していて、ウェブの仕事もたくさん見られるようになっていました。この辺りで、『今までとは違う仕事をしてみたい』『もう一度チームで働きたい』という思いがわき、元気のあるベンチャーを探したところ、当時のインサイトコアの社長が、まさにそんな人で。そこが気に入って入社を決めました」
――以来、15年以上にわたり、ウェブやアプリの開発を手がけてきた金崎は、自分の書いたプログラムに対し、即座に反応が返ってくるウェブの世界に面白さを見出してきた、と話します。2019年からはCTOとしてエンジニアを束ねるなか、2023年にはデジタルシフト社との統合、翌年にはデジタルシフトへの合流が決まります。
「デジタルシフト社は、それまで一緒に仕事をしてきていたということもありますし、仲間入りすることは、シナジー効果も出るので良い判断だと思いました。ただ、これを機にマネジメントから外してもらう選択を取りました。マネジメントは意欲のある若い人に任せ、私は現場の仲間が新しい環境に順応していけるように見守りたいと思ったのです。現場でお客さまと関わる業務に自分自身が面白さを感じていたことも大きかったですね。まだまだチャレンジし続けたいと考え、マネジメントを降りる決断をしました」
――金崎の根底にあるのは、オプトが創業以来、大切にしている「楽天主義」にも「先義後利」にも通ずるものがあります。
「若いメンバーにはいつも『要件や期日が厳しいことを理由に仕事を断ってしまうと、そこからは何も生まれない』と話しています。『それよりも、どうやって受けていくかを考え、先に進める姿勢を大事にしよう』と。そうやって対応していれば、必ずお客さまから返ってくるものがあります。仕事はいかにできるという前提で考えられるかによって相手との関係も変わってくると思っています。たしかに、このような考え方のもと仕事を受けていれば、大変な思いもするし、ときに悔いが出てくることもあります。でも、そういう悩みがあるのも仕事を受けたからこそ。リスクが高いからとお断りしていたら、悩みどころか仕事すらありません。お客さまの要望を受け止め、『とにかくやってみよう』の精神で仕事ができれば、気持ちはタフになるし、経験も積めるし、利益も生まれる。何よりお客さまに喜んでもらえ、信頼も得られます。この姿勢と行動力は、オプトでも大切にしたいです」

変わらずエンジニアとして、変わり続けることに挑戦していく
――周囲に好影響を与えながら、自らも最前線を走り続ける金崎は、あらゆる経験を肩に背負い、ときに次の世代に分け与えながら、新しい道を進み続けています。
「社内でいつも話すのは、『失敗しても平気だと思ってほしい』ということ。私も失敗して弱音を吐くことがありますが、それを隠そうとは思いません。なぜなら、そういう姿を見せても、頼ってくれる人、評価してくれる人がいるからです。真剣に取り組んでいれば、失敗してもいい。やらないよりかは断然にいい。そういう気持ちで何でも取り組んでほしいですね」
――さらには、チームワークの考え方として金崎が掲げること。それは、15年以上続けている少年サッカーのコーチの経験が大きい、と話します。
「私のなかのチームワークの定義は、『自分のやれることを全力でやる』『チームの中でやれること増やす』の2つです。自分にできることを全力でやれば、誰しもがチームに必ず貢献できるし、そのなかで自分のできることを増やす努力をすることもまたチームに貢献していることになります。
少年サッカーは、上手い子ばかりが集まっているわけではないため、そうでなくてもチームに貢献していると思える取り組みが必要であり、上達を実感できるようにすることもまた必要です。私にとって、少年サッカーチームも会社のチームも、チームビルディングの基本的な考え方は同じ。全員が主体的に動けるチーム、そして組織になれるよう働きかけていきたいです」
――高いパフォーマンスを発揮し続けるエンジニアとして、経験豊富なビジネスパーソンとして、そして、たくさんのキャリアの転換点に立ってきた一人の人間として。金崎はこの先、どんな世界に身を置こうとしているのでしょうか。そこにはオプトの将来に思いを馳せながら、これまで培ってきた能力を社会に活かしたいと念じる姿がありました。
「若いときは、収益の上がる仕事をして会社に貢献したい、周りに認められたいという気持ちもありましたが、いまはそれよりも世の中の役に立てるサービス、人に必要とされるサービスに憧れます。たとえば、教育系や地方創生に関すること、ハンディキャップを持つ方をサポートできるサービスに関心があります。効率性や生産性で選ばれるのではなく、そのサービスや、それをつくる過程も含めて、お客さまや社会に評価され、共感を寄せられ、『だから、一緒に仕事がしたい』と言われるようなプロダクトを、オプトで手がけることが理想です。
世の中は、現状を変えていかないことには持続できないものにあふれています。オプトもまた、常に新しいことに取り組む姿勢が求められています。その1つの選択肢として、こうしたこともできればいいですよね。そして、そのときが来たら、ぜひ私に任せてほしい。来たるその日に向け、引き続き仕事に励んでいきたいです」
