UNSUNG HEROES

実績紹介

「テプラ」で観光地の多言語対応をサポート。商品PRと社会貢献を両立させるために企業が持つべき姿勢とは

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日本政府観光局によれば、2018年に日本を訪れた訪日観光客は3千万人を突破。20年前に比べ7倍以上に増加しており、今後もさらなる増加が見込まれています。

こうした訪日観光客の増加を受け、政府は外国語案内の強化をはじめとした対策を観光地に促していますが、資金や人手が足りず、なかなか整備が進まない現状があります。

そんな中、2019年5月にキングジムと茨城県の景勝地「偕楽園」は共同で、訪日観光客に向けた多言語対応の取り組みを実施。この取り組みを紹介した動画は50万回以上再生されただけでなく、数多くのメディアで紹介されるなど、大きな話題を呼びました。

企業と観光地が共同で社会課題に取り組むこの企画は何故生まれたのか。株式会社キングジムの稲葉大力さんと、この取り組みの企画・制作をサポートしたオプトの高橋護さんに話を伺いました。

キングジムの主力商品「テプラ」で観光地の多言語対応をサポート
 

ライター岡本

キングジムが茨城県の偕楽園と共同で実施した多言語対応への取り組みとはどのようなものでしょうか。

稲葉

日本三大庭園の一つである偕楽園には、近年外国人観光客が増加しており、園内の多言語対応の遅れが課題となっていました。そこで、キングジムの主力商品であるラベルライター「テプラ」の翻訳機能を使い、多言語ラベルを作成。そのラベルを園内の既存の看板に貼ったり、ラベルを使って外国語表示の看板を新たに作成することで、手間や費用をかけず、多言語対応を進める取り組みを行いました。 

「テプラ」の翻訳機能を使って作られたベトナム語の多言語ラベル

ライター岡本

多言語対応した様子を紹介する動画も作成されたんですよね。

稲葉

そうですね。テプラで多言語ラベルを作成し、園内に貼る際には、実際に茨城県に住む方々にもご協力いただきました。その作業の様子や、看板を設置した後の様子を撮影して、動画にまとめたんです。 

株式会社キングジム 稲葉大力さん

ライター岡本

元々、キングジムがこの企画に取り組もうと思ったきっかけは何だったのでしょう。

稲葉

「テプラ」は弊社を代表する商品であり、ありがたいことにこれまで累計1,000万台以上を販売してきました。おそらく商品名を耳にしたことがある方も多いと思います。しかし、発売して30年以上経ち、「テプラ」は家庭向けの機種やカートリッジが多数投入されたり、オフィス向けの機種も機能的にかなり進化しています。
 

しかし、あくまでもオフィスでラベリングに使用するだけのものという認識が定着していることに課題を感じていました。そこで、改めて、「テプラ」の認知度を高めたいと思ったのがきっかけです。 

ライター岡本

今回の動画以外にも、キングジムの公式SNSアカウントでは、「テプラ」に関する情報を発信されていますよね。

稲葉

そうですね。公式SNSアカウントでは、「テプラ」の多様な使い方を紹介する投稿をしたり、「テプラ」のプレンゼントキャンペーンを行なったりと、これまでも様々な形でPRを行なってきました。しかし、それでもまだ十分とは思えませんでした。
 

そこで、今までキングジムであまりチャレンジしたことのなかった動画を使って、新たな層にも訴求できないかと考えたのです。ただ、これまで自社で動画制作を行なった経験がなく、企画や制作に関するノウハウがなかったため、オプトさんにご協力をお願いしました。 

ライター岡本

キングジムからの相談を受けて、高橋さんはどのように企画に落とし込んでいったのでしょうか。

高橋

まずは、「テプラ」ならではの良さである多様な機能について稲葉さんから説明をしてもらいました。
 

「テプラ」は、パソコンと接続もできる業務用機種から、より安価でデザインにもこだわった家庭用機種まで、様々なシリーズが用意されています。また、通常のシールだけでなく、マグネットラベル、アイロン接着が可能な布製ラベルなどカートリッジの種類も豊富に取り揃えられているんですよね。多様な使い方ができる「テプラ」の機能の中でも特に目を引いたのが、15言語に対応する「テプラ」専用PCラベルソフトの翻訳機能だったのです。
 

2020年に東京オリンピックが開催されるタイミングでもあり、日本各地で多言語対応に関する関心は高まりつつあります。今、この翻訳機能を使って多言語対応を進める取り組みを行えば、「テプラ」ならではの良さをより多くの人に知ってもらえる良い機会になるのではないか。そう考えて、今回の動画作成を提案しました。 

株式会社オプト 高橋護さん

ライター岡本

オプトからこの企画を聞いた時は、どう感じましたか?

稲葉

社会課題に関わるようなPR動画の作成は初めてでした。今までアプローチできなかった層に「テプラ」の良さを知ってもらうきっかけになると感じましたね。また、社会的意義のある今回の取り組みは、弊社としてもぜひチャレンジしてみたいと強く思いました。 

「PRのため」ではなく相手の課題解決に真摯に寄り添う
 

ライター岡本

今回の取り組みを、茨城県の偕楽園で行うことになったのは何故でしょうか。

高橋

これまで一緒に仕事をしてきた地方自治体の職員の方から「地方には外国人観光客が増えているものの、資金や人員に余裕がなく、多言語対応が進みづらい現状がある」と伺う機会がありました。だからこそ、費用も人手もかけずにできる今回の取り組みは、地方の観光地で行う価値があると考えていました。
 

そんな時、以前からご縁があった茨城県庁の職員の方からのご紹介で、日本三名園の一つである偕楽園が多言語対応への課題を抱えていると知る機会がありました。偕楽園に今回のキングジムとのコラボ企画を提案したところ、一緒に取り組めることが決まったのです。 

ライター岡本

そこから、どのような手順で動画を制作していったのでしょうか。

高橋

まずは偕楽園のスタッフの方々に実際に感じている課題感をヒアリングするところから始めました。今回は、「テプラ」のPR動画の企画であると同時に、偕楽園の課題解決に寄り添う企画でもあります。だからこそ、先方が困っている事柄を丁寧にヒアリングし、本当に意味のある取り組みを行いたかったのです。 

稲葉

動画の冒頭では、看板の表示が読めず、立ち入り禁止の植え込みに入ってしまう外国人観光客が描かれています。これは、実際に偕楽園でしばしば起こっているそうです。このように、ヒアリングを通して外国人観光客の方が迷いやすいポイントや、偕楽園のスタッフの方々が困っているポイントを洗い出していきました。 

ライター岡本

動画に映されている立ち入り禁止の看板などは、実際に偕楽園で働く方々のリアルな声から生まれたものだったのですね。

稲葉

そうなんです。また、「テプラ」の翻訳機能を使って多言語ラベルを作成する際には、茨城県に住む有志の方々にご協力いただきました。
 

結果、地元の方々の様々なアイデアを元に、バラエティに富んだ素敵な看板が出来上がり、偕楽園のスタッフの方々からも好評でした。 

身近な社会課題を扱った動画が共感を呼び、大きな話題に
 

ライター岡本

今回の取り組みは、多数のメディアにも取り上げられたんですよね。

高橋

そうですね。約50ものメディアで取り上げられました。これは、どこでも、誰にでも真似できる社会課題解決の方法を伝える公共性の高い動画であったためだと考えています。その公共性の高さから、現地に直接取材に来てくださるメディアがあったり、「Yahoo!ニュース」等の大手サイトへの二次掲載にも繋がるなど、大きな反響がありました。
 

また、多言語対応に関する動画であったことから、インバウンド系メディアや動画メディアなど、多様なジャンルのメディアに取り上げていただきました。これまでキングジムが取り上げられたことがなかったこれらのメディアに掲載されたことで、当初の目的である「新たな層へのアプローチ」も達成され、大きな効果があったと感じています。 

ライター岡本

メディア以外の人々からの反応はいかがでした?

稲葉

キングジムの各種公式SNSから配信を行い、全体で50万回以上の再生数を達成しました。動画を通して「テプラ」を多くの方に知ってもらえたのはもちろん、Twitter等で好意的な意見が多く見られたのも効果を感じたポイントです。
 

「『テプラ』ってこんな使い方もできるんだね」「キングジムさん素敵な企画をありがとう」といったコメントを見て、今回の動画が「テプラ」やキングジムの好意度形成につながったと実感しました。
 

また社内的にも今回の動画の評判は高かったんですよね。全国各地の営業スタッフから「展示会でムービーを流したいのでデータが欲しい」との問い合わせもありました。社会課題に取り組むキングジムの姿勢をお客様に知ってもらうことで、企業や商品に対する信頼感に繋がる副次的な効果も感じています。 

ライター岡本

様々な反響があったんですね。当初想定していた再生回数を上回った要因はどこにあったのでしょうか。

稲葉

社会課題の中でも多くの人が身近に感じるテーマであり、共感を得やすかったからだと考えています。海外を訪れた経験があれば、日本語表示がなくて困ったことがある人も少なくないでしょう。自分ごととして捉えやすく「見てみよう」という気持ちを喚起しやすかったのだと思います。また、オーガニックでのリーチ以外にもYouTube、Facebook、Instagramでは広告配信も行い、対象となる人々にリーチするようにしました。 

ライター岡本

広告配信も実施されたんですね。広告配信の結果はいかがでしたか?

高橋

一般的な動画広告と比較して、ソーシャルグッドな話題を扱った今回の動画は高い完全視聴率を達成できました。ただし、Instagramでは流し見傾向が強く、他の配信先と比較すると完全視聴率は低かったですね。完全視聴率を重視する場合はInstagram以外のSNSのみで配信するか、短めの尺の動画を用意するなどの工夫が必要だと感じました。 

社会課題に企業が関わる際に必要なのは、課題への当事者意識
 

ライター岡本

最後に企業が社会課題に関するマーケティング施策を行う上で大切にすべきことを教えてください。

稲葉

マーケティングへの意識が強すぎると、ついつい企業の思い描いた通りの絵を撮ろうとしてしまったり、相手の課題解決に寄り添う気持ちを忘れてしまったりしがちです。しかし、企業として社会課題に関わる以上、真摯に解決に貢献する責任が生じます。
 

今回は動画のプロット作成前に、偕楽園の事務局の方だけでなく、実際に売店やチケット売り場で働くスタッフにもヒアリングを行い、外国人観光客が増える中で実際に困っている事柄をヒアリングしました。現場の課題感から乖離せず、本当の課題解決に繋がる取り組みを行う必要性を感じています。 

高橋

また、マーケティング施策と考えると「動画を撮って公開し、効果測定をしたら終わり」といった意識になってしまいがちです。でも、その地域の方が社会課題の当事者であることに終わりはないんですよね。そう考えると企業がより長期的な視点を持って施策に取り組む必要があるのではないでしょうか。
 

例えば、今回の動画ではキングジムがテプラで多言語ラベルを作ってプレゼントするのではなく、実際に茨城県に住んでいる有志の方々にラベルを作ってもらいました。そこには、今後の地域の多言語対応の担い手を増やしたり、他の地域の方に「私たちでもできそう」と感じてもらう意図もありました。
 

あくまで企業は、地域の方と課題解決に取り組むチームの一員である意識を持つこと。だからこそ関わる一時点だけでなく、長期的な視点から施策を立案する。その当事者意識が、企業が社会課題に関するマーケティング施策を行う上で最も重要なことではないでしょうか。 

Written by岡本実希

Editorモリジュンヤ

Photographer加藤甫

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