UNSUNG HEROES

中の人

デザイナーが自走できる環境づくりから見えた、人を育てるための大切なスタンス

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「自分がスパルタ式で教わってきたので、自分が教えるときにも同じようにしてしまったんです」

オプトでデザイナーを務める阿部一馬さんは、メンバーを育てる立場になった当初をこう振り返ります。自分のやり方についてこられないメンバーに出会うまで、スパルタ式で教える方法しか知らず、人を育てる立場としての未熟さに気づけていなかったと阿部さんは言います。

「うまくいってしまったのは、自分の教え方がよかったのではなく、教えた人が自分のやり方についてきてこられただけ」

そう気付いてから、教えることに対してのスタンスが変わった阿部さんは、現在、沖縄にあるクリエイティブチームにおいて、デザイナーが自走できる環境づくりに携わっています。今回は教えることの経験を踏まえつつ、その環境づくりで行ったこと、その過程で気づいた「デザイナーとして大切にすべきこと」をお聞きしました。


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  • 阿部 一馬

    ダイレクトデザインプランニング1部
    デザインの専門学校を卒業後、デザイン会社・広告代理店へ入社。紙媒体を中心にデザインを手掛ける。2017年にオプトへ入社。Web広告のデザインは未経験だったが、現場で学びながら経験を重ね半年でチームマネージャーに昇格。現在は沖縄にあるオプトのクリエイティブチームを強化するため、デザイナーが自走できる環境づくりに奮闘している。

育成とは、できる・できないを評価するのではなく、主体的にその人が動ける状態になれるようにサポートをすること 



 
ライター木村

デザインを初めて教える立場になったのは、いつですか?

阿部

自社のデザイン部にいたベテランメンバーが3人ほど退職した時期でした。教える人が足りないこともあり、お声掛けいただいたんです。デザイン部が立ち上がったばかりだったこともあり、部署に新卒社員が多い状況。「僕しかいないかもしれない」と考え引き受けることにしたんです。 

ライター木村

教えることに対して抵抗はありましたか?

阿部

正直、最初はイヤでしたね。そもそも、誰かに「教える」経験も無かったですから。 

ライター木村

経験の無いなかで、どのように教えていったのでしょう?

阿部

オプトに入社する前はデザイン会社にいたのですが、そこではスパルタ式で、仕事は現場で見て自分で学ぶ。任された仕事ができない・やれないは許さない、作ったものに対してもフィードバックは感覚的な指示ばかりの環境でした。オプトで教育を担当するようになってからは、まず自分が経験したやり方を行いました。すると、結構うまくいってしまって(笑)。
 

しばらくして、「沖縄にあるクリエイティブチームの部署でも教えてほしい」と相談されました。東京での教育がうまくいき自信もついていたので、違う環境でチャレンジするいい機会だと、沖縄への出向を決めました。 

ライター木村

その頃の沖縄チームはどのような状況でしたか?

阿部

デザイナーとしてスキルを身につけて成長したいと考えている人が多かったです。ただ、中にはデザイン経験がなく、具体的にどんなステップを踏めばいいかはわからず戸惑っている人もいました。しかし、そこに対して、サポートできる人もいない状況でした。 

 

チームを強くするには、教えてもらうことに依存せず、メンバーそれぞれが自ら考えて動ける状態を目指さなければいけないと考えていました。そのため、デザイナーが自走しやすい環境を整えることを注力しました。ただ、最初はうまくいかなかったんです。 

ライター木村

そうなんですか?

阿部

以前までスパルタ式でうまくいってましたから、沖縄でも同じようにしてみたら、スパルタ式が合わない人や、イヤになってしまう人も出てきてしまって。 

 

これまでうまくいっていたのは、自分の教え方がよかったのではなく、教えた人たちがたまたま自分のやり方に合っていただけなんだと気付きました。 

 

このまま自分のやり方だけを続けても、スパルタ式でもついてこられる人を選別するだけで、「自走しやすい環境」を整えているとは言えないと思いました。 

ライター木村

「育てるとは何か」を見直す機会になったんですね。

阿部

これまでデザイナーとして、広告などのデザインを作るときには、伝えたいことが伝わるようにターゲット層に合わせて表現を考えてきたのに、メンバー育成においては、相手に合わせることを考えられていなかったんです。 

 

育成とは「できる・できないを評価するのではなく、主体的にその人が動ける状態になれるようにサポートをすること」なんだと気づきました。 

具体的なフィードバックをしつつ、「問い」を投げかける
 

ライター木村

育成に対する意識の変化がありつつ、その後はどのように環境を整えていきましたか?

阿部

デザイナーが自身のキャリアを形成していくために必要なスキルが身につけられるように、もともと作成していた教本を、より活用するようにしました。 

ライター木村

教本?

阿部

デザインの基本要素や向き合い方に始まり、沖縄のクリエイティブチームで制作する機会が多い「バナー広告の作り方」を具体例に落とし込んだものです。
 

限られた時間の中で良いものを制作できる能力や最新技術などへの対応力、トレンドに対してアンテナを貼る情報収集力。時代の変化や技術の進歩に合わせて適応できるように常に新しいスキルや考え方を培っていくことの大切さまで具体的に記載されています。 


ライター木村

仕事のマニュアルという域を超え、「デザイナーとは何か」という根本にも触れていますね。

阿部

いきなり「いいデザインを作れるようになりましょう」と言われても、デザイナーとしての経験が少ないと何をすべきかわからない。「それぞれで考えて」と丸投げするのではなく、自ら考えられるようになるための基礎から身につけられる内容にしました。
 

たとえば、デザイナーとして成長するには、「テクニカルスキルとポータブルスキルのバランスが重要だ」と記載しています。
 

テクニカルスキルは、デザインする上で使うツールの活用法やデザイン案を生み出す発想力。ポータブルスキルは、クライアントの目的や理想を引き出すヒアリング力、デザインの意図を伝える論理的思考力と言語化力、作成物の方向性にズレがないか認識を合わせるコミュニケーション能力などです。 

ライター木村

オプトの優秀なデザイナーの定義が丁寧に言語化されているものなのですね。  

阿部

そうとも言えるかもしれません。
 

教本の形に具現化することで、私以外のメンバーが教えるときでも「いいデザイン」や「優秀なデザイナー」について説明しやすくなったと思います。教わったメンバー自身が次のメンバーに教えるときのベースになるようにも作ってあるんです。 

教本の現在のバージョンは全145ページに及ぶ。

ライター木村

教えるメンバーは、どのように活用していますか?

阿部

新人研修を行う前の段階で、事前に渡して、全体に目を通してもらうようにしています。あとは、研修でも使用したり、実務でわからないことが出たときやミスが発生したときに参照できるようにしています。 

ライター木村

教本以外で環境を整える上で行ったことはなんですか?

阿部

教える人が大切にすべきスタンスを共有しました。
 

人によっては、これまでできなかったことができるようになった途端、「なんでこんなこともできないのか」と思ってしまう場合がある。つまり、できなかった頃を忘れてしまうんです。しかし、できないことをメンバーのせいにするのは教えるということに対しての責務を怠っているのではないか。 

阿部

また、業務においてメンバーが抱えている課題をただ「考えろ」と突き放すのではなく、メンバー自身が気づけるようにフィードバックしていきましょうと共有しました。
 

たとえば、新人のデザインに「どこか気持ちが悪い」というフィードバックをするメンバーがいました。それは作られたデザインに違和感がある場合に使われる言葉だったのですが、言われた方は「どこの部分に」「どのような違和感」があるのかは具体的には掴みづらい。
 

そこで、具体的な気持ち悪さの理由を伝えつつ、作ったメンバー自身が、指摘された箇所を見てどう思うかを問う方がよいのでは、と教育を担当するメンバーに提案しました。 

ライター木村

環境を整えたことで、沖縄チームに変化はありましたか?

阿部

内省する機会が増えたように思います。「忙しいから」や「センスがないから」と仕事ができない理由を述べる前に、「どうしてできないのか、なにが課題となっているのか」を内省して考えられるようになったんです。
 

少しずつですが、自走できるデザイナーが増え、教わったメンバーが次のメンバーに教える文化が醸成されつつあります。 

ニーズを的確に捉え、それを超えるデザインを作れるように
 

ライター木村

今回の経験を経て、あらためて気づいた、デザイナーとして大切なことを聞かせてください。

阿部

デザイナーはデザインを作れるだけではダメだということです。たしかに最終のアウトプットはデザインではありますが、そこまでの過程においても、クライアントの課題解決や目標達成を支援するためにできることを考えておく必要があります。
 

そのためには、クライアントのニーズを汲み取る力がなくてはなりません。いかに装飾的なクオリティが高くても、それが相手の要望と違うものだと、喜んでもらえないですから。
 

優秀なデザイナーと呼ばれる人は、クライアントやユーザーのニーズを的確に捉えつつ、それを超えるデザインを作れていると思うんです。 

ライター木村

さらに一歩進んで、優秀でありながら、「自分ならではの魅力」を持つデザイナーになるには、どうすればいいと思いますか?

阿部

デザイナーとして、やるべきことが実現できている人は、自分で考える力がついています。日々の業務においてどうすればクライアントの課題や目標達成に貢献できるかを考えているからこそ、自分の成長のために必要な視点も得られているはず。デザイナーとして学んでいることは、デザインに限らず、他の分野でも活かせると思うんです。そして経験を積み重ねながら、自分の特性や得意不得意、自身に合う環境を見極めていく。そこから自分らしさを見出していけば、「ならでは」の強みを活かしたデザイナーになれるのではないでしょうか。 

Written by木村和博

Editor長谷川賢人

Photographer加藤甫

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