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日系メーカーと取り組んだ、デジタルマーケティングに強い組織の作り方

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「海外と比べると日本のEC化率はまだまだ低いんです」

スマートフォンの普及と共に隆盛するECやデジタルマーケティング。全体の商取引のうちに占める電子商取引の割合(※EC化率)は世界規模で年々高まっていますが、日本はまだ道半ば。しかし、決して無視のできない割合になりつつあります。

新興勢力の勢いに劣らず、なおかつ「デジタルならでは」のデータ分析を活かすべく、各社がデジタルマーケティングに取り組みはじめています。しかし、先行するツールや事例に踊るばかりで、自社で適切に運用できているメーカーはまだ少ないようです。

オプトのマーケティングマネジメント部では、クライアントの現場に伴走することで、デジタルマーケティングの支援を行ってきました。今回は「自社をデジタルマーケティングに強い組織にしたいのでサポートして欲しい」と依頼を受けた事例を元に、その課題を解決していくプロセスを伺いました。プロジェクトマネージャー、コンサルタント、データアーキテクトという各自の担当を持ち、課題と向き合った日々を振り返ります。

“とりあえずデジタル”ではなく、マーケティングとは何かを見直す
 

ライター木村

実例を伺う前にお聞きしたいのですが、なぜ「デジタルマーケティングの支援」が求められるのでしょうか?

石橋

多くの人がスマートフォンやパソコンといったデジタル媒体に接触している時間が多くなっています。そこに注目しないとユーザーの動向が捉えづらくなることに危機感を抱いている企業が増えているのだと思います。
 

一方で、経営陣から「デジタルマーケティングに取り組もう!」と突然言われてしまい、社内に経験者のいないままに「とりあえずやらなければいけない……けれど、どうすればいいかわからない」というケースが多いようです。しかし、あくまでマーケティング活動の一つですし、「とりあえず」で始められるものでもないはずです。
 

「マーケティングとは何か」を考えてみると、大雑把に言えば物を売るための仕組みやメッセージを考えることですよね。その上でマーケターは、自社の事業やサービスにデジタル領域でのマーケティング施策は必要なのか、オンラインで顧客と接点を持ってどのようなコミュニケーションを取りたいのかを考えていく必要があるんです。 

マーケティングマネジメント部 石橋優。プロジェクトではプロジェクトマネジメントを担当。

ライター木村

デジタルマーケティングが注目されているのは、ECサイトなど、オンライン経由の商品購入率も重要性が増しているからなのでしょうか。

木戸

一因ではあると思います。でも、海外と比べると日本でのEC化率はまだ低いんですよ。BtoC市場でみれば、アメリカで約10%、中国は約15%、日本だと5.79%です。日本の消費者が物を購入する場所は、いまだに実店舗が多いのが現状です。 

ライター木村

それならば、デジタルマーケティングよりもリアルにつながるマーケティングに注力すべきでは?

木戸

ただ、実際に買わずともオンラインで商品を探した経験を持つ方は多く、「買い物」において、消費者が実店舗に求めるものが変化しています。ECサイトであれば、大量の商品から欲しいものを探し、購入もできる。 

 

一方、実店舗では、欲しいものを探すのに時間がかかったり、レジで待たされたりしてしまう。「ECサイトではもっと楽なのに!」というこれまでにない不満が消費者に生まれています。企業は、消費者の求めるものの変化を捉える力が益々求められている。 

OMOプロデュース部木戸大祐。プロジェクトではデータアーキテクトを担当。

木戸

ECサイトも実店舗も、消費者にとっては、企業やブランドとの接点です。だからこそ、別々に切り分けてしまうのではなく、それぞれの得意領域を活かして、顧客体験を考えることが重要。デジタルマーケティングの施策検討においても、顧客体験の視点を軸にしながらオフラインとオンラインを併せて取り組んでいくことが大切なんです。 

データから推測できるものを理解して、ユーザーを想像する
 

ライター木村

ここからは実例を交えてお話を聞かせてください。ご支援されている日系メーカーさんはどんな課題感を持って、依頼してきたのですか?

石橋

まずは勉強会のご依頼でした。デジタルマーケティングに取り組む部署を立ち上げたけれど、その領域に精通しているメンバーがいないということで。 

ライター木村

どういった勉強会を行いましたか?

石橋

具体的な施策ではなく、まずは「本当にデジタルマーケティングが必要なのか」を見直す時間を設けました。自社サービスがターゲットにしているユーザー像を考え、彼らにどのようなことを伝えたいのか。次に、そのユーザーの行動動線を考えたときにデジタル領域におけるコミュニケーションが必要かどうか。それが必要ならば、どのような形でメッセージを発信すればいいか。この一連の流れを、ワークショップで一緒に考えたんです。 

 

ワークショップが好評だったこともあり、さらに「デジタルマーケティングに強い組織にしたいのでサポートして欲しい」と依頼をいただきました。つまり、データを活用して施策のPDCAが回せる組織にしたいという要望ですね。 

ライター木村

どのように支援を進めたのでしょう?

石橋

最初の3ヶ月間は週2日で先方に常駐して、現状で行われている施策の把握、社内でしか見られないデータの分析、現場の方々の活動を見て、PDCAが回せていない原因を探していきました。 

迫田

最初に常駐したことで、現場の方々が気軽に相談してくれたり、外部パートナーとして打ち合わせをするだけでは聞けない本音を聞けましたよね。それによって、経営から求められるものと現場部門とのギャップも把握できたんです。 

マーケティングマネジメント部 迫田苑子。プロジェクトでは、コンサルティング業務(PDCAプロセスの仕組み化)を担当。

ライター木村

その結果、どういった課題が見えましたか?

迫田

そもそも現場の方々は、デジタルマーケティングの推進以外にも複数のミッションを持っていました。そのために皆さん忙しく、デジタルマーケティング施策のPDCAを回す習慣があまり根付いていない状況でした。
 

そこで、PDCA業務をスムーズに実行するためのフォーマットをこちらで作成し、限られた時間の中でもPDCAの各ポイントを押さえられるスキームを整えました。しかし「そうは言ってもなかなか時間がとれない」と、すぐには活用していただけませんでした。 

ライター木村

では、どうしたのですか?

迫田

あるべき姿をお伝えするだけでなく、現場の方々にPDCAを回すことの「価値」をきちんと感じていただく必要があると考えました。そこで、フォーマットの必要性を理解していただくために、彼らが過去に行った施策をフォーマットに入れ込んだ資料を作成してプレゼンをしたんです。
 

資料を見ると、施策の良かった点や課題などが明確になります。自分たちが実際に行った施策を例にしたことで、フォーマットが役立つ実感を持っていただけたようです。それ以降は活用していただけるようになり、徐々にPDCAを回す習慣が根付いていきました。 

ライター木村

そこからは滞りなく進みましたか?

横山

こちらのクライアント様では、いくつかのブランドを持っており、中にはPDCAのフォーマットをうまく活用できないケースもあったんです。 

マーケティングマネジメント部 横山かよ子。プロジェクトでは、コンサルティング業務(活用支援)を担当。

横山

ブランドごとで施策に使える予算や準備期間、関わっている広告代理店も違います。既存の施策や取れているデータを把握して、活用できそうなものを見極めた上でのチューニングが必要でした。 

木戸

どのブランドもデータを一応は取っていて、ツールも導入している。しかし、「PDCAを回すために必要なデータはどれなのか」を把握しきれていないのは共通の課題でしたよね。PDCAを回すためには、データから推測できるものを理解し、ユーザーを想像して、有効な施策を見極めていくことが肝心です。だからこそ、まずはデータを見る目的をはっきりさせておく必要があります。 

石橋

たとえば、「商品購入につながると推測できるデータはなにか」といったようにですね。さらに、私たちは現状取れていたデータをもとに「商品が売れた要因」を考え、足りないデータを整理しました。行った施策を改善するために、他にどんなデータが参考になるかも紐付いていなかったわけです。そこで、ユーザーの行動と必要なデータを紐付け、メンバーに共有したんです。 

木戸

あとは、見るべきデータがツールごとにわかれていてバラバラだったので、BIツールを使って情報をひとつにまとめて普段から見えやすい形に整えました。 

石橋

それを組織全体で共有できるようにしたところ、経営陣も現場部門も「見るべき数字」を定期的にチェックできるようになり、結果的にデータを活用していく空気が醸成されたんです。 

ライター木村

実際にPDCA改善に取り組んで、どんな成果がありましたか? 

石橋

今回の取り組みは始めたばかりであり、売り上げなどに紐付く具体的な数字での成果はまだありません。しかし、PDCA改善に取り組み、現場の方々がデジタル領域における施策の設計・検討ができるようになり、「点ではなく線で施策を行えるようになった」と役員の方々からも評価をいただきました。 

組織としてのありたい姿を持ち、マーケティングを楽しむ!
 

ライター木村

今回のプロジェクトを通して、デジタルマーケティングに強い組織を作るために必要なことはなんだと考えますか?

石橋

組織としてのありたい姿を持って、オーナーシップを発揮してくれる人がいること。PDCAを回しやすい環境の実現は、「やったほうがいいけれど、緊急度が高くない」と後回しにされやすい。そうではなく、自社にとって必要な取り組みだと思っている人がいなければ進みません。
 

ただ、一人で実現していくのは難しいので、社内で味方を増やしたり、今回のように外部パートナーの手を借りたりするのがいいかもしれません。外部からの客観的な視点があることで通りやすい意見もあるでしょうから。 

木戸

なんとなくデジタルマーケティングに飛びつくのではなく、自社の事業やサービスになぜ必要なのかを考えた上で組織作りをしていくことですね。出発点を間違えなければ、自然と必要な手段を取り入れていけると思うんです。 

横山

経営陣が舵を切っている場合は、組織のメンバーに「なぜデジタルマーケティングが必要だと考えているのか」を共有しておくことですね。組織を変えていく際には、現場にイレギュラーな業務が発生するかもしれません。やみくもに仕事量を増やしたいわけではなく、この取り組みによって組織をよりよくしていきたいと意義を伝えるのは大切だと思います。あくまで現場にもユーザーにもメリットのある環境を作ろうとしていることを理解してもらうのが重要ですよね。 

迫田

意義もそうですし、デジタルマーケティングの担当者一人ひとりがどうやったら取り組みを楽しめるかを考えるのも大切だと思うんです。義務感で始めるのではなく、「ユーザーの行動が想像できて楽しい」とか「データから施策のアイデアが想像できる」とか。現場の声を聞きながら、どうすれば楽しさを見い出せるかを考えて環境づくりをするのが鍵になる気がします。 

石橋

マーケティングを楽しめる環境を作りたいですよね。どうやったら自社の事業やサービスの魅力をユーザーに届けられるのか。サービスとユーザーがよりよい形で出会う方法を楽しんで考えていれば、なんとなく新しい手段に飛びつくことは無いと思うんです。 

 

そして、よりよい形を想像するには、自社の商品・サービスのお客様は誰で、どのような人なのか、彼らが持っている悩みや解決したい問題を深く考え、知る必要があります。知るためにはやはり、ユーザー行動やユーザー属性、といったデータを得られるデジタル領域の役割は重要です。デジタルとアナログ、オンラインとオフラインを行き来して、デジタルマーケティングに取り組んでほしい。それはユーザーと関係を築いていくうえでも、組織を変化させるうえでも大切なはずです。 

Written by木村和博

Editor長谷川賢人

Photographer加藤甫

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