Interview
データアナリスト内田建の構想。データが紡ぐ「ビジネス」と「キャリア」の可能性
※本文は取材当時の情報です。
2023年入社、福井県出身の内田建。学生時代、データ活用による“事象の可視化”のおもしろさに開眼。その情熱は、現在も内田が目指すキャリアとともにあります。プロのマーケターになる——。そのために着実な成長を遂げようと、力強く進み続ける本人の原点と現在地、目指す到達点に迫りました。
LTVマーケティングの実現に一手 入社2年目でつかんだ手応え
——3歳から始めた硬式テニスで、小学生時代に全国ランキング1位を受賞。高校受験では、県下有数の進学校に合格し、その後進学した早稲田大学では、研究論文で大学最高名誉褒賞を受賞。課外活動では、早稲田大学総代表ダンサーとして、東京六大学ストリートダンスリーグ戦準優勝までを牽引。「やると決めたからには、結果を残す」。子どものころから自分にそう言い続けてきた内田は、4月開催のグループ社員総会『New Value Forum 2024』で、ルーキー部門グランプリに最年少で受賞。社会人としても一つの結果を出しました。
『New Value Forum』における内田のエントリーテーマは、「新・データ分析手法×配信活用によるKPI190%成長~デモグラ情報がなくても、会員属性を可視化する分析の実現〜」。担当する小売業のお客さまの、LINE領域における課題解決が発端となりました。
「お客さまのKPIであり、課題であった反応率の向上を目指すためには、個々のユーザーの関心と、お客さまに届けたい内容の重ね合わせが大切になると考えました。しかし、それを実現するうえで必要となるユーザーデータが当時不十分であり、クラスター分析(※1)をするには難しい状態でした。しかし、私はLINE領域において、ユーザーの行動から趣向を導き、よりユーザーが求める情報を発信することを可能にしました。この結果に基づき、改めて施策を行ったところ、ユーザーの反応率を2倍近く成長させることができた点が、この取り組みのポイントの一つです。『New Value Forum』では、それに加え、同じ課題を持つ顧客を担当する社員が、同様の分析と、施策の実行ができるよう生成AIを活用して汎用性を担保し、全社としてお客さまへ価値提供ができる仕組みを構築したことを、成果として発表しました」
※1 クラスター分析
異なるものが混在する集団から似たものを集めてまとめ(クラスター)、対象を分類する分析手法
——「ステージでプロジェクトの発表ができるだけで十分」という気持ちでいた内田にとって、グランプリの受賞は、まさかの結果だったといいます。しかし、いまは、「形になるものを残せたことは素直に嬉しいです」と顔をほころばせながら、この成果が、社内外からの反響につながっていることに手応えをつかんでいます。
「まず、お客さまからの反響ですが、LINEの施策に関わるすべてのご担当者が、打ち合わせに参加されるようになりました。全員でLINEの取り組みを変えていこう、という機運が高まっており、私たちへの期待値も信頼度も上がったように感じます。さらには、『これからも内田さんと仕事がしたい』と、お客さまに言ってもらえたことは、大きな励みになっています。
そして、社内からの反響ですが、この分析手法はLINEの施策のみならず、メルマガなど、さまざまな場面で使用できることが認知され、『やり方を教えてほしい』と、たくさんの方からお声がけいただくようになりました。
現在、オプトはLTVマーケティングを標榜し、お客さまに対して、広告だけでなく、旧デジタルシフト社が培ったCRM(※2)の知見を掛け合わせた価値創造に注力しています。ここに貢献できる土壌を築けたことは、新たなやりがいになりそうです」
※2 CRM
「Customer Relationship Management」の略で、顧客情報を統合的に管理し、良好な関係性を長期的に築き上げ、サービスや製品の利用を継続的に促す経営手法を指す。
——LTVマーケティングの本丸であるCRM領域における価値提供について、「CRMの重要性」と、「CRMと広告を掛け合わせていく重要性」の二つの視点から、このように見解を述べます。
「日本の人口は減少し続けていますが、これは、広告を介した新規ユーザーとの出会いを創出できる母数が減っていることと同義といえます。となると、既存ユーザーとの関係を大切にして、中長期的なユーザーとの関係を育むことが、この先重要です。
さらに、CRMを分析していると、ロイヤルカスタマーの特性も分かります。そうすると、広告をやみくもに出すのではなく、将来的にその商品やサービスのファンとなる見込みのある方に対して、広告を表示させることができます。このように、CRMと広告を掛け合わせて考えることは、新規顧客の方との出会いの創出と、既存顧客のファン化を企図するうえでも、重要です」
データ分析を、学問から仕事に
——いまでは、『データ分析、CRMといえば内田』と、社員から頼られる内田ですが、データ分析に関心を持つようになった原体験があるといいます。
「大学時代のゼミの影響が大きいのですが、その前段として地方創生に興味を持ったことがあります。私は、大学入学前の浪人期間中、伯父の家に居候していました。伯父の仕事は、福井県の事業を東京で展開することであり、折に触れ、福井県の取り組みを聞かせてくれました。そのなかで、“地域活性化の要”といわれる若者世代の自分自身が、『福井で暮らしたい』『大学を卒業したら帰ってきたい』と思える政策について考えるようになり、地方創生に関心を持つようになりました。大学選びも、地方創生について学べる学部に進むという目標ができました」
——その後、内田は早稲田大学人間科学部に進み、地域や、人口移動を研究する社会学系のゼミに所属。その地域の状態をデータによって可視化し、そこから必要な政策を考察するという担当教授の研究手法が内田の好奇心を大いに掻き立て、以降、データ分析にのめり込むようになります。
その研究の一環として、出身地である福井県をテーマに、データによる地域の状態の可視化を試みた内田。その活動は、県への施策提言、知事が参加するイベントでの登壇・発表と大きく発展。冒頭の、大学の最高名誉褒賞である「小野梓記念学術賞」受賞にもつながります。
この、実態をデータで可視化し、課題を見つけて施策を考えるという姿勢は、現在のマーケティングの業務にもつながっていると内田は話します。
——「分析していたら気づけば朝になっていたこともあった」というほど、データ分析に夢中の大学生活を過ごした内田は、その先の進路のことを、このように回想します。
「学術研究に進む道もありましたが、私は地方創生に取り組むにあたり、まずはビジネスの経験を積む必要があると考えました。これは、大学時代にご縁のあった自治体や地域の方との交流のなかで、『政策は、地域にお金が循環する取り組みでなければならない』『お金が循環しなければ事業は続かず、人も集まらない』と感じたことが背景にあります。これらの課題をクリアするためには、ビジネス、特にマーケティングの視点を磨き、プロフェッショナルの領域に踏み込める人材になる必要がある、と思い至ったのです」
——その強い思いのもと、就職活動ではマーケティング領域におけるデータアナリストのキャリアを歩める会社を検討。最終的に、コンサルティング業界と、広告業界のどちらに就職するかについて、熟考したと振り返ります。
「私のように研究気質なタイプは、自分が関わった施策が、どのような結果を出すのか分からないとウズウズしてしまうんです。そうなると、データを活用してビジネスを動かすデジタル系の広告代理店が自分には合っていると考えました。そのなかでオプトに決めたのは、個人を見てくれる会社と感じたからです。実際、面接では、それまでの人生でどのような経験を積んできたのかを、時間を割いて聞いてくれました。それだけ人を知ろうとし、やりたいことを見つけようとしてくれるのなら、その人のキャリアはもちろん、個人そのものも大切にしてくれる会社なんだろうと思えたのです。
内定の承諾にあたっては、データアナリストとして活躍している先輩社員の、採用動画が後押しになりました。データ分析にまつわる経験を大学生活で過ごした自分の感じていた課題と、オプトでの業務内容に、解決の糸口が見えたのです」
——その先輩社員とは、のちに内田のメンターとなる菊池です。入社間もない時期に菊池から言われた言葉は、「いまでも宝物」と内田は話します。
「それは、『案件業務と内田くんの意志の重なりを見つけられるといいね』という言葉です。私はこの言葉を、自分の意志を持って働くことを大切にしてほしい、「これをやりたい」「これに興味がある」という軸を持って、その軸と案件業務で重ねられるものを見つけ、新しい価値を生み出してほしい、という意味として受け止めています。
菊池さんは、動画のなかでも、『ワクワクすることを見つけてください』とメッセージを残しています。私もその想いを、しっかりと受け継いでいきたいです」
失敗を糧に、お客さまの期待に応えながら日々前進していく
——ここまで順風満帆に歩んできたように見える内田ですが、その裏にはもちろん失敗も。その一つは、『New Value Forum』エントリーのきっかけとなったお客さまのプロジェクトで起こりました。
その日も、データアナリスト兼コンサルタントとして、データ分析をもとにお客さまとの打ち合わせを行っていた内田。しかし、お客さまの反応は、「仮説や示唆はそれで合っていますか?」という指摘でした。内田は、お客さまの過去の取り組みをすべて把握しないまま分析を行い、見解を述べていたのです。
「担当の方から、『お客さんの事業を知ろうとする努力をしない限り、信頼は勝ち取れませんよ』とお叱りを受け、自分の本気度の足らなさ、甘さを反省しました。それ以来、お客さまが「どのような施策を」「いつから」「何のために」現在行っているのか考えるクセ付けができました。日々、お客さまと密に連携しているからこそ、私の成長への期待が込められている指摘だったと受け止めています」
——お客さまを知ったうえで、ビジネスを考える。仕事の本質につながる示唆を得られた内田は、「お客さまにも日々育てていただいている」という実感のもと仕事に向かい、そのなかでやりがいや、仕事に対する価値観を育んできました。
「入社すぐの何もできない状態から、できることがだんだんと増え、いまは自身で仕事をつくりにいく段階だと思っています。このように、自分が日々成長することが、お客さまへの良いアウトプットにつながるという好循環ができています。自分が介在することによって、お客さまの課題を解決できることは、私に『価値を生み出せている』という実感を持たせてくれます。また、“ビジネスに活かせる”データ分析ができる人は、日本においてはそこまで多く存在していません。自分がその一端を担い、専門的な知見のもと、お客さまのビジネスに寄与できることは喜びであり、お客さまに喜んでいただけることもまたやりがいです。
自分が携わったからには、ビジネスを前に進めることを大切にしたいですね。これを実行している先輩の姿は格好良く、お客さまにも必要とされています。私もそういう人になりたいです。これらに加え、私は自分のやりたいことを貫くことで、市場で独自のポジションが築けると信じています。ですから、自分のやりたいことを貫く。貫くからには、お客さまに絶対に価値を残す。この心づもりも大切にしています」
——胸を張ってそう話す内田の視線は、浪人中、大学時代の経験を通して明確にした「地方創生を実行できる、プロのマーケターになる」という目標をまっすぐに捉え、迷いがありません。ここにたどり着くためのステップとして、まず目指す姿をこのように話します。
「『マーケティングのことなら、何でもできます』と胸を張っていえるCMO(Chief Marketing Officer:最高マーケティング責任者)になりたいです。加えて、実業を行いながら大学で研究・教鞭をとる実務家教員になることもかなえていきたいです。
私は何かを始めるとき、必ず熟考します。その決断軸は、『それができるようになった姿を想像したとき、自分のことを格好良いと思えるのか』と、『その領域で結果を出せるのか』の二つです。データアナリストを目指したのも、この二つが揃ったからです。子どものころから中途半端が一番嫌いなまま、ここまで来ました。この先も、やると決めたらやり切るところまで、とことん追求していきたいです」